モルガナイトのペンダント③

「あれ、ホタルさん、どこ行くの?」

マダムの店を出てすぐにセレスタに声を掛けられて立ち止まる。

そこにはセレスタとジェードが立っていた。


「セレスタ達こそどうしたの?」

「ホタルさん、どうしているかな~って。ほら、マダム、いい人だけど、ちょっときついところあるからさ」

どうやら私を心配して見に来てくれたらしい。

二人とも警備隊の仕事があるだろうにありがたい話だ。


「ありがとう。うん、大丈夫。マダムには良くしてもらっているよ」

「……おつかいか? ホタル、町のこと良く知らないんじゃないのか?」

「あっ、うん。おつかいって言うか……」

私は二人に今回のいきさつをざっくりと説明する。


「そっかぁ、宝飾合成、上手くいかなかったんだ」

「まぁ、マダムが修行しろっていうなら見込みあるんだろ。焦らずがんばれよ」

「うん。そうだね」

慰めてくれる二人の言葉が心苦しい。

日本人の私には無理なんだけれどね、とは、とても言えない。


「それより、すごいこと請け合っちゃったね」

「アクセサリーを直すなんて、そんなことできるのか?」

驚く二人の姿を見て、やっぱりアクセサリーを直すって習慣がないんだなぁ、と実感する。


「多分。これからそのための道具を探しに道具屋さんに行くところだったの」

「なるほどな。道具屋ならすぐそこだし、一緒に行ってやるよ」

「いいの? 二人とも警備隊の仕事は?」

ジェードの言葉は嬉しいけれど、あまり二人の迷惑になりたくはない。


「今日は町の見回りだから、ついでってことで大丈夫。それに、知らない町で一人で買い物なんて心細いでしょ」

そう言ってニッコリと笑うセレスタ。

はぁ、やっぱりこの子、王子様だわ。


「それに道具屋って言ったらリシアのところだろ」

「あぁ、そっか。リシアのところか……うん、ホタルさん、一緒に行こう」

「えっ? 何? なんで? その、リシアさんって何かあるの?」

二人の態度に急に不安になる。


「えっ? 超頑固おやじで一見さんには道具は売らん、とか、そう言う系?」

だったらついて来てもらった方がありがたい。

そういうのちょっと苦手なんだよね。

頑固おやじのラーメン屋さんとか、いくらおいしくても全然楽しめないタイプだし。


「頑固おやじ? リシアが? まさか!」

「お前、本当に想像力豊かだよな」

私の言葉にいきなり吹き出した二人を見て、どうやら違ったようだと気づく。

っていうか、笑いすぎじゃない? セレスタなんて笑いすぎて泣き出してるし。

憮然とした私を見て、セレスタがようやく笑いを収める。


「ごめん、ごめん。大丈夫。頑固おやじではないから」

「行ってみりゃわかるよ」

歩き出してからも、リシアが頑固おやじ、と呟いては、ぷっと笑いだすセレスタをしり目に私たちはリシアの店へと向かった。

全く失礼な話だよ。こっちは町の人のことなんて全然知らないのにさ。

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