第三章の二 牛鬼猛攻②
「これでも私が誰かと、問いますかね?」
それは紛れもない、あずさが持っていたあの天狗の
「あなたが、
奏の鋭い声に、
「そちらの少年は……、あぁ、
しゃがれた声で紫の毒を吐きながら、
「嘆かわしい。
「は?」
「その娘を守った、と言う事実は、
「やれやれ。神に守られし人間を見に来たら、なるほど。ただの小娘ではないですか」
今度は
それでも
「なるほど、なるほど。ただの小娘だが、うまそうだ」
舌なめずりをする
「今日はご挨拶に参っただけ。以後、お見知りおきを」
そう言うと、
残された三人は、寒さを忘れたかのように
三人は無言のまま、目的地としていた喫茶店へと入っていた。中は暖かく、外の寒風が嘘のようであった。
三人はそれぞれ飲み物を注文する。そしてそれらが揃ったところで、奏が口を開いたのだった。
「あれが、
あまりの威圧感に声を失ってしまった。
「今まで出会ってきたどの妖怪とも違う感じがした」
これはあずさの弁だ。今まで出会ってきた妖怪たちに、危険な雰囲気はあまり感じられなかった。結人も、結局はこちら側の協力者となってくれている。本格的に敵対してくる妖怪は誰もいなかったのだ。
「
結人が言う。
あの
「でも、あの紫色の息はなんだったのかしら?」
奏の素朴な疑問にも、結人は難なく答えた。
「あれは、
あの紫の息に触れると、たちまち毒にその身をおかされてしまうのだと、結人は説明した。
つまり、接近戦ではこちらが不利になる、と言うことだ。
何とかして
「ところで、どうして私が天狗の
あずさはホットのミルクティーをすすりながら言う。それに答えたのは結人だった。
「
神に愛された人間として、あずさは
「知らなかった……」
「そりゃそうですよ。向こうの世界の出来事ですから」
結人はにっこり笑って答えた。
しかしそうなってくると、
「心配はいらないですよ。そう易々と神に庇護された者に手を出す程、妖怪も愚かではないので」
だから結人も、あずさが死んだ時に
「とにかく、今やただの人間となってしまったあずさは、単独行動を避けてください」
結人の言葉にあずさはややあって頷いた。
「奏は、どうするの?」
あずさの疑問に、奏はん~、と唸って答えた。
「アタシは大丈夫よ。結人くんを退けられるくらいに強い守護霊様がついているんだもの」
にっこりと微笑んで言われて、あずさはそれ以上何も言えなくなってしまった。
その後、三人は
長い一日が終わるとき、あずさが言った。
「明日、橋姫にも相談したいと思うの」
「橋姫ですか」
結人の問いかけにあずさはうん、と答えた。
三人で考えていても正直、八方塞りなのは否めない。橋姫なら何かを知っているかもしれないし、打開策を提示してくれるかもしれない。そのため、橋姫にも相談したいと言うのがあずさの考えだった。
「いいんじゃないかしら? 第三者の意見も必要にはなってくると思うわ」
奏のその言葉で、明日、橋姫のいる橋のたもとに集まることが決まった。奏と結人はあずさを家まで送り届けると、それぞれの家路へとついたのだった。
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