第三章の一 冬休み③
「なぁに……? って、えっ?」
目の前の状況にあずさは目をしばたたかせる。
「結人、何してるの?」
「
端的に言われ、あずさは結人が睨みつけている方向を見てようやく状況が掴めてきた。結人の視線の先には、背の高い髪の乱れた女が、包丁を片手に立っている。
「何、この人。禍々しすぎないっ?」
あずさは隣に立つ奏に言う。奏は苦笑いでそれに応じていた。
「狐、邪魔をするなら貴様も食ってしまうぞ」
「食う? お前が、俺を?」
小ばかにするように言う結人はやはり余裕の様子だ。それに対し、
「この娘から奪った
結人の言葉に
「なんのことかな」
「とぼけるな!」
結人が叫ぶと同時に、その九尾が
「さぁ、この娘から奪った
「く、苦しい……」
「言わぬか?」
結人は更に
「
結人は容赦なくその締める力を緩めない。とうとう
「
「
結人の顔色が変わった。
「消えろ」
結人は不機嫌そうに言うと
あずさはそんな結人の様子をぽかんと眺めるしか出来なかった。
「殺しちゃった……の?」
あずさの呟きに結人は沈黙で返すと、するすると人間の姿に戻っていった。
「
奏の呟きに結人は奏を
「とりあえず、あずさちゃんが言っていたような、
場をとりなすように言う奏に、あずさは力なく頷いた。ここに来て、自分がとんでもない失態をおかしたのではないかと思い始めたのだ。
「奏……、私、
震えるあずさを、奏は大丈夫よ、と言って
「結人くん、あずさちゃんを助けてくれたじゃない。これからも何かあったら、結人くんが助けてくれるわ」
明るく言う奏に対し、あずさは相変わらず沈んだ様子だ。
「奏は?」
「え?」
「奏は、助けてくれないの?」
あずさの純粋な質問に奏は微苦笑している。
「アタシには、あんな力はないもの。結人くんの方が頼りになると思うわ」
「そんなことないよ! 奏にも、助けてもらってる」
あずさは言う。それを聞いて奏はありがとう、と微笑むと、
「そろそろいい時間だわ。美容のためにも寝なさいな」
そう言って、あずさの部屋を後にするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます