第一章の三 田んぼでの出来事③
「アナタが
奏の言葉を聞いた泥田坊の頭に疑問符が浮かんでいる。何故? と問う
「それが、
「神の、願い?」
泥田坊の言葉に二人は大きく頷いた。
「しかし奴らは田を馬鹿にした。愚弄した。だから神の願いだとしてもただでは返せない。記憶を少し、いじらせて貰う」
「神の願いは、これで聞き入れた」
「大丈夫?」
奏の問いかけに少年たちはゆっくりと目を開けた。
「俺……」
まだ焦点が定まっていないが、徐々に意識がはっきりしてくる。少年たちの見た目には外傷などはないようだった。
「親父に謝らねーと!」
気がついた少年たちは脱兎のごとく駆け出していった。奏とあずさは何が起きたのか全く分からなかった。
その日の夜。
町は少年たちが帰ってきたこと、その少年たちが田んぼ仕事へ積極的になっていたことで持ちきりになっていた。
「と言うわけで、無事に? 任務は達成しました!」
あずさは明るい声で事の次第を
今夜はツクヨミの
「ちょっと誤算はありましたけど、
硬い表情の
「お前は『見えない』ようだな?」
「は、はい……」
突然の話に奏は申し訳ない気持ちになって口を開いた。すると
「
「えっ?」
「今後の神々の願いもまた、これで
「何が、起きたの……?」
呆然とする奏の前にツクヨミが現れて言った。
「お疲れ様。これからは奏くんも『感じる』だけじゃなくて『見える』ようになったってことだよ」
にっこりと笑うツクヨミに奏はじっと自分の手を見つめていた。
「分からないわ」
そして呟く。
「これから実感していくことになるよ」
明るく言うのはあずさだった。
こうして『見える』力を手に入れた奏の新たな毎日が、明日から始まることとなる。
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