時と歌

ネク・ビエンテ 黒霧の館12

「私は乃愛の魔力そのもの」

「何だって」

耳を疑った。

「魔力が擬人化したとでも言うのか」

率直な疑問が思わず声に出る。

「そうだよ。そして本体の乃愛は月の化物の能力を埋め込まれてる。取り外すことは出来ないだろうけど」

埋め込まれてる……か。嫌な響きだ。

確信にも似た思いで、ネクが尋ねる。

「それはどう言った能力か分かるか？」

「黒の霧を操る能力を」

やはりそうだった。今目の前にいるこの少女はあの黒霧の言わば片割れ。

だが、分かったところでと言う感じではある。

「きっと今頃乃愛は自身の魔力が無くなることを危惧して人から魔力を奪ってる」

焦るようにはやるように言葉を紡ぐノア。

本当のことを言うべきか、言う必要はあるか？そう悩んでいるとフォールスがサラリと言う。

「ああ、被害は尋常じゃない」

ネクは驚いてフォールスの方を向く。

「後で知る方が辛い。それは経験済みだ」

フォールスが耳元で告げる。

ネクは何も言えなくなる。

「そっか。そうだよね……止めなきゃいけない！」

乃愛が実害を出したことを知ってノアには決意、義務、罪の概念が植え付いた。

「でもどうやって止める？乃愛は色の魔法使いにも引けを取らなかった。間違いなく世界最強の一角だよ」

「……じゃあ取り敢えずこの屋敷を攻略しよう」

「何故だ、もう必要なことはお前から……」

ノアはフォールスの言葉に重なるように告げる。

その声は震えていた。

「多分私の家族は全員化け物に変えられている。さっきの氷霧の奴さ、私の執事だったの。光に送られた時彼が悲しそうな元の顔をしてた」

「ネク1人で出来そうか？」

「やるわよ、誰だと思ってんの」

「……愚問だった。我が主」