黒霧の少女12


それは夢なのかと思った。淡い光を放った植物が視界の限りを覆い尽くす。そして、その全てが意志を持っているかのように、黒霧の方を向いていた。


茨、蔦、巨木、果ては花まで咲き乱れたこの空間はまさに緑、色の魔法だった。


ここでできることはない。自分の無力さが否が応でも分かってしまう。力がなければ何も出来ない。意志を持つことさえ否定される。


世界最高峰の力を見て、見せつけられて思いが強くなる。力が必要だと。




黒霧が飛翔して、上空へ逃げる。魔力を喰らう性質がある黒霧は本能的に危険だと感じたのか植物から逃げるように飛び回る。


巨木は動きが鈍く、空中では本領発揮は出来ないようだ。その代わり、蔦と茨が広範囲に展開しながらその魔の手を迫らせる。


黒霧は蔦に向けて霧をぶつけた。すると、蔦が枯れ、萎れ、動かなくなる。


それでも途切れることなく蔦は伸び、茨は迫る。その数は増えるばかりで幾ら潰しても次から次へと黒霧へ迫る。


黒霧も緩急を付けた動きと、旋回を繰り返しながらジリ貧だと感じ取ったのか咲へ迫る。


迎え撃つ様に蔦と茨は数を増やし、低空に黒霧が来た所で巨木が機能を発揮。地面を這うようにまるで津波の様に黒霧襲い掛かる。


黒霧は正面に来た巨木の津波を霧になり僅かな隙間をすり抜ける。黒霧が巨木の津波を難なく正面から回避した先に花の弾幕が花火の様な儚さと美しさを携え、待ち構えていた。


それは、薔薇や、百合、向日葵など、季節の花々が空中に咲き乱る。


花々の一つ一つに呪いが掛けられている。魔力の妨害も含まれている為、黒霧は躱しきれず1つでも当たれば、無力な状態になる。


そう、正に今の様に。


咲は正拳突きの構えをした状態で、目の前に現れた黒色のドレスを着た少女に向き直る。


流石の咲も動揺が走るが、それも一瞬。


何かしらの魔法を使った拳が少女を襲う。

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