やはり、そうなのかもしれない。ないなんてことは、不自然だ。

 写真立ての隣には、メモ帳があって。更にその横には、何かが置かれていたようなスペースがあった。

 もしかすると、そこにあったのかもしれない。

「テレビもない。外からの情報が、断たれている」

 閉じ込められたわけでもないのに、どこか閉鎖された空間。

 激しい雨が、より外界への脱出を阻んでいるようだった。

「ここから、どこへ行くの?」

 地下か。あるいは、二人がいるかもしれない食堂側か。

 一瞬、キーツは逡巡する素振りを見せて。

「先に、地下を見ておく」

 言って、階段を下り始めた。

 どうか、二人が地下にはいませんように。そして、下りてきませんようにと願う。

 ずっと緊張続きの心臓が、いつか破裂しないかと憂いながら下って。

 そうして、キーツの背中に隠れながら、コツコツと足音の反響する廊下を歩いた。

 薄い墨を刷いたような空を、呑み込まんとするかのように現れた分厚い黒雲が。森の、館の上空を覆わんとしていたなんて、知りもしないで。

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