8・犬とお婆ちゃんの思い出

昔家にいた犬と私のお婆ちゃんの思い出を話します。



犬の名はフラット(仮名)で中型犬でした。ちょっと怖い部類の犬種でしたが、ふさふさした耳の辺りとかなでなでするのが好きでした。



フラットは家以外の人が来ると犬の任務を果たすように吠え、私や妹の友達が車で迎えに来ると当然吠え、しかしフラットは、迎えに来る車がほぼ毎日来ると段々慣れてきて、夜でも吠えなくなるのでした。



だがフラットは視力が悪いのか成人式の時、着物姿で現れた私を見て無茶苦茶吠えまくった。こいつは何なんだと。



ある日私はフラットに餌をあげようと餌を入れた丸い餌入れの器を持って行きました。ご飯が貰えると察知したフラットは喜ぶように尻尾を回転させ、私の顔を見ます。



「おすわり!」



と言うとフラットは若干腰を浮かした中腰でおすわりの体制に入ります。



「待て!」



と言うとでよだれを溢れさせて中腰のまま興奮気味に待つ。



「お手!」



と言い掌を出すと パン!! と私の掌を目一杯叩くようにお手をし、さらに



「おかわり!!」



でさらに パン!!! と掌を叩きおかわりをしてくれます。



「よし!」の声で皿に向かったフラットの食事の時間は2秒で終わり。





そんなフラットですがさらにある日、私が家の中にいる時小屋から鳴いているのに気付きました。



私が小屋に行くと、二つ隣家に住んでいた(今は違いますが)うちのお婆ちゃんが手押し車をゆっくりと押しながら歩いてくるのでした。フラットは来るたびに食べ物を持って来てくれるお婆ちゃんが大好きでした。



「くぅ〜〜〜ん、くぅ〜〜〜んぶぉおぉおおお〜〜〜ん」



お婆ちゃんに思いっきり甘えるように泣き叫ぶフラット。小屋の前に来たお婆ちゃんは手押し車に腰掛け、中からロールパンを出すと柵の間から放り投げました。



フラットはお婆ちゃんから与えられたロールパンを秒殺で食べます。

そんなフラットもやがて亡くなりました。




フラットは家の近くに埋めました。(父は昔の考えの人間でアバウトなんです)



数日後、私は家の周りを歩き回っているフラットの夢を見、目が覚めて一人で号泣しました。



二週間後、母が

「変わり果てた姿をしたフラットが家の周りを歩いている夢を見た」

と言うのです。



私はお婆ちゃんの家に行き、フラットにお経を上げて欲しいと頼みました。お婆ちゃんはわんこが好きだったと、丸いロールパンを仏壇に乗せお経を上げました。




あれから20年以上過ぎ、お婆ちゃんも亡くなりましたが、私にとってフラットもお婆ちゃんも癒される存在で掛け替えのない思い出なのでした。






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