第10話

いつもと同じように1日が始まり終わると思っていた私は、鏡に貼ってあるポストイットを見て思わず声をあげてしまった。

「身体を渡さないって本気か。その前に、この人は誰なんだ?」


色々と知りたい気持ちを抑えつつ、毎朝のルーティンを片付けた私は急いで研究室に向かった。

研究室には昨日も泊まり込みで作業をしていたのだろう。学生たちが眠そうな目をこすりながら、寝袋を畳んだり、授業の準備などを行なっていた。


「おはようございます。今日はやけに早いですね。」

学生の一人が珍しそうに私を見つめてきた。毎回、決まった時間に来る私が今日は通常より1時間も早く顔を出したのだから驚くのも無理はない。


「おはようございます。ちょっと先生に聞きたい事があって。先生は?」

「教授ならまだ顔出されていませんよ。多分、いつも通りの時間にいらっしゃるんじゃないですかね。」

「そうか。せっかく早く来たことだし、私に手伝えることがあれば手伝いたいんだけど、何かあるかな?」


そう問いかけると助手は少し考えた後、

「じゃあ、授業の準備を手伝ってもらっても良いですか?この資料をあと1時間後の授業に間に合わせないといけないんですが、昨日寝ちゃって。」

そう言うと数枚の資料を手渡してきた。


「この資料をまとめれば良いんだね。分かった。これくらいなら私にも出来そうだ。」

私は教授が来るまでの時間を潰すために、授業の準備に取り掛かった。

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