ド陰キャな俺の嫁になると声優アイドルの美少女がいつも口にするんだが~俺はアニメでライブで応援しているのでそっとしておいてください~
風白春音
第一章 白と黒
プロローグ
俺の名前は猫屋敷出雲。
朝、俺は眠い目を擦り欠伸をしながらカバンを持って学校へ行く。
高校一年生の朝は早い。
「はあ~帰ってゲームしたい」
そんな事を呟きながら俺は一人一年A組のクラスへと向かう。
クラスに向かうまでに陽キャ共の声がそこら中から聞こえる。
ああ居心地が悪いな。早く帰りたい。
「昨日放送されたアニメ見たよ。リルカ格好良かったよ」
「ありがとう。キャラと声合ってた?」
「うん。すっごい合ってた。流石声優だなーって感じ」
「まだまだ新人クラスだけどね」
「でも凄いよ。この若さで大人気原作のアニメ化の主役に抜擢されるんだから」
「ありがとう寧音」
俺が窓側の前の方の自分の席に座るとそんな会話が聞こえてきた。
俺の横で話しているのがまさかの俺が大好きなアニメの主役を演じている今注目の若手人気声優である。
奇跡的に偶然同じ高校だった。
そこそこの進学校に合格して通っているのだが、まさかの入学初日に出会ってしまった。
そして相変わらず凄く凛としていて透明感のあるそれでいて可愛らしい声。
天から授かりし才能と言っても過言ではない。
間違いなく声優だ。
(最近の声優はアイドル同様顔出しするから学校中の生徒が知っているんだよな)
昔と今では声優の注目度は違う。現在では声優目当てでアニメを見る層もかなり増えてきている。また注目度も凄い。バラエティ番組だけでなく紅白歌合戦にも出場する程なのだから。
(まあ俺は現実と偶像は分けて考えるけどな)
そう俺は横で笑顔で話している綺麗な黒髪のロングストレートに綺麗で大きな瞳。整った睫毛、くっきりした鼻筋、柑橘系のいい匂い、そして何より平均より大きい形のいい胸が合わさってできた完璧美少女白雪初音に恋などしていなかった。
だが別に勘違いしないで欲しい。俺は彼女の大ファンだ。彼女が出演するテレビ番組は必ず録画してチェックするし、表紙になった雑誌やグッズも購入する。出演が決まったアニメも必ず見るし、何よりライブも行くのだ。
だけど俺はそこに恋愛感情を持ち込まない。なぜならあくまで俺が好きなのは声優アイドルとしての謂わば偶像の白雪初音だ。決して一人の人間の白雪初音ではない。
だから告白してくる他の男子と俺は考え方が180度違う。
「よう放課後いいか。白雪に話したいことがある」
ああまただ。一人の見た目のいい所謂イケメンの男が声を掛ける。
金髪でピアスこそ校則で禁じられているものの制服も着崩してかなりチャラい。
こいつの名前はえーっと何だっけ?
まあ兎に角クラスの女子に人気があるのは事実だ。
「ええ分かったわ。放課後この教室で」
「ああ」
自信満々にチャラい陽キャは返事をして元の席へと戻る。
クラス中がざわついた。
「白雪さん今度こそ誰かと付き合うのかな?」
「玉砕するのか見ものだな」
「石田で駄目なら全員ダメだろ」
「確かにwww」
ああ石田だ。それにしても流石アイドル声優モテモテだな。
まあいいや少し寝よう。
俺は机に突っ伏して目を瞑る。
(あれ、まただ。何か視線を感じるんだが?)
横目でチラリと見ると白雪初音と目が合った。
すぐに白雪初音は目を逸らす。
そう俺は入学初日から常に誰かの視線を感じている。最初は精神を病んだと思ったが、数か月観察する事、ある一つの事実が判明した。
そうそれはあの白雪初音が俺をチラチラ見てくるのだ。
勿論クラスの誰にもそれは気づかれていないだろう。それに仮に俺がそんな事を言った暁には本当に精神病だと馬鹿にされるだけだ。
俺みたいな陰キャには彼女は不釣り合いだと認識されているからな。
(だが何故俺を見てくるんだ? 全く心当たりがないんだが)
うーん駄目だ見当もつかない。これは勇気を出して聞くしかなさそうだ。
放課後俺は彼女に真相を確かめることにした。
放課後――
「俺と付き合え。俺なら釣り合ってるだろ」
告白? ああそうかそう言えばそんな事が朝あったな。
すっかり頭から抜け落ちていた。
変な所に遭遇してしまった。
俺は教室の前で隠れるようにして告白が終わるのを待つ。何せ俺も白雪初音には用があるからな。悪いな石田盗み聞きになって。
「ごめんなさい。私今は誰かと付き合う気はないの。ほら私一応アイドル声優だし。事務所の意向で恋愛禁止なの」
「そんなもん隠れて付き合えば、ばれねえだろうが」
「それに石田君。私貴方の事好きではないから」
「な!? 俺の何処が不満なんだよ。顔だっていいし、頭だって悪くねえ。運動だってできる。不満なんかないだろうが」
「石田君に恋愛感情はないわ。以上よ、告白してくれた事は感謝するけど、その好意は受け取れないわ、ごめんなさい」
そう白雪初音が言うと石田は「くそが」と言って俺が隠れてるドアとは反対方向のドアから勢いよく出て行った。
うわあ石田でも駄目なのか。玉砕現場を見てしまった。
いやそんな事より俺も用があるんだった。
俺は石田が出て行ったあと教室のドアを開けた。
「し、白雪、ち、ちょっといいか」
「い、出雲君!?」
い、出雲君!? 名前呼び!?
白雪初音が親しくもない俺を名前呼びだと? 視線と言い一体何なんだこいつ。
「な、何か用かしら?」
冷静さを取り戻したのか白雪は頬を少しばかり染めながらもクールな態度を装う。
一体何故照れているのだろうか?
「いや勘違いならごめんなんだけど、俺を入学初日から見て来てるよな?」
「な、なな何をいいい言ってるのかしら」
うわあすげえ動揺してる。しかもめっちゃ赤面してるし。
確信した。こいつは俺を見てる。間違いない。
「何故見てる? 理由は?」
「べ、別に見てないわよ」
「いやいや。その動揺っぷりから隠すのは無理だろ。嘘が下手だな」
「ううっ……はあいいわ。いい機会だし一言言っておこうと思うわ出雲君」
綺麗な黒髪を右手で掻き上げると、白雪は一言、言い放つ。
俺の想像を遥かに超える言葉を。
「私出雲君のお嫁さんになるわ」
「は!?」
「聞こえなかったの? だから私出雲君のお嫁さんになるわ」
ああ駄目だ意味不明だ。
何を言っているんだこいつは。
この日俺は若手人気声優アイドルの白雪初音に告白された。
そうあの数々の男性を振って玉砕させた白雪初音が俺にだ。
しかもお嫁さんになるって、いきなり諸々飛び越えすぎだろうが。
「あ、いや俺はオタクなので外側から応援しています」
俺はこの日彼女を振った。
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