妄想備忘録

水切六六

なんか目が見える

いきなりは現れた。

 初めて気付いたのは、通勤中だった。

 車通りの多い、至って普通の交差点。

 そこに立つ電信柱と目があった。

 揶揄では無い。


」があったから「」が合った。


次に気付いたのは会社到着間際。

 我社のビルの屋上付近でと目が合った。

 只々こちらを見ている。

 のせいで今日は気分が優れない。

 足取り重く帰路に立つ。

 あの交差点には近づきたくないので、電車で帰ることにした。


 しかし、やはりそこにもがいた。

 ホームからこちらを見ている。

 いや、違う。ホームこちらを見ていた。

 なんとか電車に乗り込み、自宅の最寄り駅へと向かったが、やはりホームとが合ってしまった。


 電車を降り、トボトボと歩きだす。

 一体何だと言うんだ…。

 怒りと恐怖で顔をしかめ、ため息をつき、下を向く。

 今度は地面と「」が合った。

 驚いて反射的に目を空へとやるが、直ぐに後悔した。

 今度は青空と「」が合った。


 そして気付いた私はこう言った。


「ニッポンオワタ…」

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