第19話、間話
◆◇◆4月26日
「ではこれより! 第一回 秋津イメージアップ作戦会議を開始します!」
「ぱふぱふ」「ワーイ」「お、ぉー……」
「やる気のなさよ」
放課後。空き教室に集まった四人。雲雀、君軸、拳墜、仕事しろ花子が集まっていた。
「ゴールデンウイークを間近に控えてようやく第一回会議ですかーハァー↑」
「まあまあここは一つ、これで手ぇうとうや」
「手にモヤシ握らせるの止めて?」
相変わらずな二人に花子はやれやれ、という風に息を吐く。
「ここ最近はテスト期間でしたし……あと君軸くんが謎の骨折(腰)、雲雀さんの怪しいバイト、私の両親が謎の失踪を遂げて集まれなかったのが大きな原因でしょう……」
「おお、見事なレベルに地雷属性しかねえなコイツら。え? お前らホント高校生? つか拳墜、お前いまどうしてんの?」
「なんか父が死んで保険金降りたのでしばらくはバイトして……でしょうか」
そう、拳墜の両親の家庭事情はかなり散々な状態となっていた。父はなんか殺され、母は行方不明となっていた!!
「wwwww」
「大変だな、立花は。まあこれで元気だしなよ」(にぎ)
「あなたたち糞ですか!? ああなんかこのモヤシべとべとするぅ!?」
「オリーブオイルコーティングと呼んでくれ」
割と深刻な問題に対して笑いを堪えられない雲雀と君軸。かなり糞だった。
「いやぁ、コイツのイメージアップする気が急に失せてきた」
「最近は偏見によるダメージが少なくなってきていますから、正直問題ないですよ」
「あー、そうだった。なんかこの前の事件での雲雀ちゃんの対応が効いたみたいだぜー」「この前の対応? 詳しく話してくれ」
君軸が思い出したように呟く。それは拳墜の父が雲雀を短気で殴った事件の後対応である。
「ほら雲雀、頬にでっけー傷つけて見るだけで痛々しい有様だったろ? そんな傷つけてんのに雲雀、まるでその傷が当たり前のものみたいに振る舞ったから連中、かなり困惑したんだよ。『近付きたくない奴』から『憐れすぎる奴』にな」
「僕は憐れまれていた……?」
「まあ……その、元気だしなwよ……ww」
「立花、笑い隠せてないぞ」
「え、今時の高校生性格ゴミ過ぎない? 他の奴は違うよな? 他の奴は人の心あるよな?」「遠回しに俺たち人間じゃないって言ってて草」
入学してそろそろ一ヶ月。この四人は短いながらも密度の濃い時間を過ごした影響か、仲良くなっていた。
「でも一応会議開いたわけだし、何か案を出さないと先生が泣いてしまいそうなのも確かです……」
「じゃー、なんか案だすかー。雲雀なんかねぇ?」
「あー、じゃあ僕の父親の強姦殺人の真犯人を捕まえるとか?」
………………空気、否、空間が凍った。
「………………ん? 秋津、今、なんて?」
「? いえ、だから父に冤罪をかけた人間を捕まえるとかどうかと言ってるのです」
「………………はぇ?」
「………………むー?」
「wwwwwwwwww」
再び凍る空間。沈黙、唖然、爆笑。反応は三者三様だが共通点として全員の背景には冷え切った呆れがあった。日陰になってる教室の隅っこが妙に目立つ。
「「はああああああああああああああああああああああ!!?」」
「ちょっ、うるさ! なんですか急に」
「いや雲雀、これお前が悪いよww」
叫ぶ二人、耳を塞ぐ雲雀、茶化す君軸。バランスが取れていた。
「秋津お前、父親冤罪なの!?」
「え? ああ、はい。事件時刻、父は家にいました」
「なんなんですか!? いやなんなんですか!?」
「お前がなんなんだよ」
「んで、真犯人って誰何?」
「市長の息子、ちなみに立花に腹パンした奴がそうだよ」
衝撃の事実。かなりの超展開に戸惑いながらも必死に深呼吸をする。
「と、言っても証拠がないので無理。という結論にしかなりません」
「お、結論でたな。必要条件からの破綻、はい論破」
「言いたいだけだろ。つかお前も案出せ」
腕を組み机に突っ伏して軽い口調で提案する。
「へーへー、じゃあそうだなぁ……ここは雲雀が人と接する機会を増やせばいいんでね―の?」
君軸の言葉が理解できなかった立花は首を傾げる。
「? どういうこと? 秋津が人と接する機会を増やすとどうs」
「まあ、それが無難か」「無難な道が結局一番効果的なんだよ。下手に奇を狙ってでもイメージアップする局面でもないしな」
君軸の案に雲雀と花子が賛成する。それをみた拳墜は。
「…………まあそうですね! それが一番でしょう!」
少しだけ虚勢を張ってそう告げた。
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