第48話 平和の柱。3/4
そして酒を
「いつもこんな風に世の中に介入してんのか?」
ススリと水を
「どうかしら。今回はルーゼンや
「細やかな直感やヒントを語り掛ける事はあるけれど、基本的には本人の意志や行動に結果を任せているわよ」
「へぇ。それで——そんな素敵な神様が、俺を呼び付けた理由は何だ? 調味料の
何の気無く投げつけた疑問、けれど
「まさか、他の四人が二次会に付き合ってくれなくて寂しくなったから、なんて言わないよな」
チラリと視線を流すは、ミリスとの間に左右二つずつある空席。宴会後の光景を、背後にアルキラルが控えているにも関わらず片付けさせていない所を見れば、かなりの深い意味があるに違いないと思うイミトである。
「まさかまさか……ちゃんとそれ以外の理由もありますよー」
「……」
そんなイミトの視線の動きに勘づき、ほくそ笑むミリスは穏やかに
「けれど、私が与えるのはヒントだけ。今回の件みたいに、罪人さんが色々察してくれると助かるわ」
口の中に残る酒の後味を
放った言葉は
だが、
「……なるほど。ルーゼンビフォアも入れて五人か」
「ごほっ、けほっ……少し早すぎないかしら。もしかして、もう分かっちゃった?」
その唐突な思考展開には
「いんや、分かってない事だらけだろ。この
ポリリと、
漬物を噛みつつも、漬け込んでいる時間や味付け、或いは美しい盛り付け方を探りつつ、漬物の飾られている
「……そうね、アナタが元居た世界で仕入れてきたの。お米も用意しましょうか?」
——それは愛だと、神は
微笑ましい顔つきで貧民に富を分け与える慈愛に満ちたようなミリスは、手に持つ酒を御膳に置き、イミトと同じものを食す。
「いや……流石に米まで食うと帰りたくなっちまうからな。止めとくわ」
だが、見下された気がしたイミトは己の性分や好奇心を自嘲しつつ、先んじて気を利かせようとしたアルキラルの動きを視線で制止させ、
かつて生き、そして死に別れた世界の面影に——或いは、
「——そう……どうしても食べたくなったら東方に向かうと良いわ、あそこには米の文化が根付いているから」
すると、全てを
「ありがちだな……まぁ教えてくれてアリガトウな話だが」
それが東に何かやるべき事と
そして——、分からぬ事を考えるよりも今は詰め込む時と、
「察するに、結構な違反スレスレなんじゃねぇの。偽札とか使わないで、ちゃんと金を払って手に入れてんだろうな」
話題を変えて楽しげな声色で酒に
「——ふふ、ちゃんと対価は払って正式に手続きを踏んでから手に入れていますよ。アナタの世界の天使たちに感謝したい所ね」
「なるほど、あっちの世界の天使たちが働いて手に入れた金で経済を乱さないまま物資を横流ししてるわけか」
「少し言い方に問題がありそうだけれど、まぁそういう事ね。もしかして他の世界の料理が良かったかしら、今日は議題の
「……まぁ、興味が無いって言ったら噓になるけど、美味けりゃなんでも良いさ」
酒場で気分よく酒を飲む相手に使うような話術で、或いは教えたがりの精神を突くようにイミトはミリスとの会話を織り成し、少しづつ遠回しに確信に近付いていくのである。
恐らくそれは——ミリスも知っての事だろう。
「議題とか言ってたが、神様の世界ってのも穏健派やら過激派やら政治的に忙しそうだな」
「ホントに。平和に家で酒でも飲んでりゃ事も無いってのにね」
「飲んだくれが暴れるから秩序が居るんだろ。酒だけじゃ世の中は平和にならないっての」
何かを察しさせようとするミリス、彼女が伝えようとしている何かを察しようとするイミト。
さらりさらりと互いに話に織り交ぜていく印象的な言葉。真っ向からは語れぬ出来事の全容を隠語さながらに遠回しに形作っていく。
「「面倒くさいったら無いな」」
「……」
されど二人のその目には、確かな真剣みで互いに何かを斬り合うような色合いが映り込んでいるのである。
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