第42話 その特別な一日の始まりに。1/6
林をざわめかせる風の
森や山の入り口に近い草原野原に風が逃げゆく世界の片隅。
「イミト様が居なくても‼」
「……何とか美味しい朝食を」
「「えいえい、おー」」
彼女らは威勢を吐いて、
「デュエラ……なんぞ、それは」
その様子を
「いつもイミト様がやっている号令なのですよ、ワタクシサマも一度やってみたかったのでカトレア様に協力してもらったのです、ます‼」
けれど異なる彼女の姿に驚く事も無く、顔布越しからも分かる程に、にこやかにデュエラが笑えば事も無く。デュエラは未だに
「いえ……その私は……はい」
「全く……昨晩は敵襲が無かったとはいえ、気を抜かしおってからに」
体の無いデュラハンと、
それぞれの事情を抱えた異端なる組み合わせの三人の特別な一日の始まりは、こうして訪れたのである。
「それで——貴様ら料理など出来るのか、これまでイミトに任せっきりであったろうが」
「はいなのです、ですので昨日イミト様に教えてもらった簡単な朝食を作るので御座いますよ」
訳あって、今は別行動を取っている旅の仲間の名前を出しつつ、クレアの
「その名も——、ジャガイモのガレットなのです‼」
「……ガレット。ふむ、聞き馴染みの無い料理であるな」
「私も初めて聞く料理なのですが、大丈夫なのでしょうか……来る戦いに備え、食事を採るのは大事かと思いますが、あまり冒険をした料理は良くないのではないかと」
意気揚々と手に持ったジャガイモを撫で愛でるデュエラを他所に、クレアとカトレアの二人は聞き馴染みの無い言葉の響きに、顎を撫でるように眉をひそめた。
特にカトレア・バーニディッシュに至っては、不安な顔色で今にも無邪気に蛮行を働きそうなデュエラをなだめすかそうという腹づもり。
「言っても始まらん。デュエラの好きにさせよ、カトレア」
「それに貴様は
そんなカトレアを見かねて、人の振り見て我が振り直せと同じくデュエラに対し、
しかし、それに対する返答は——
「……はい。根拠はありませんが、次の戦いこそ役に立てると思われます」
何かしらの覚悟に満ち満ちた、確かな自信に根付いた答え。根拠がないと答弁しつつも、自らの掌にジッと視線を落とし、手に残っている感触を今一度と実感するように握り締める。
それはクレアにも伝わったようだった。カトレアの
歴戦の佇まいに風がざわめくようだった。
「あの……お二方様、そろそろ始めても宜しいで御座いますですか?」
そんな不穏に、デュエラがジャガイモを両手で包みながら恐る恐ると尋ねる。
「なんぞ、我らの事は気にせずに始めれば良かろう」
空腹に腹の虫をキュウと鳴らすデュエラの問いに、
するとデュエラは、言い
「えっと……その、なのです。実は、ジャガイモの
両手で包むジャガイモと指を
人間社会と
「ぇ……ああ、はい。了解いたしました。では——」
そんな少女の思わぬ
「「……」」
息を飲むようにカトレアの
「——……」
しかし、いつまで経ってのカトレアの刃は動かない。ジャガイモが、時を待ちかねて
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