第12話

「さくら……本当にすまなかった」


カインが頭を下げた。

隣に座るカインは座っていてもおおきかったのもあって頭を下げてようやくさくらの顔目線になるぐらいだった。ちょうど目の前にカインの黒髪がサラっと額をを隠したせいで表情はわからなかった。


そっと手を伸ばし王様にしたようにあたまをポンポンと叩いた。

黒髪が指の隙間にサラッと落ちる。

撫でながら


「カイン? 本当にもう気にしてないし怒ったりしてないから。まぁちょっと恥ずかしかったけど、わすれる……うん忘れるから。それより私ここに暫くお世話になるみたいなんだけど、なにもしなくていいのかな?何か出来る事あればおてつだいしたいんだけど……(魔法もつかえるしね)ってとりあえず頭をあげて?」


カインが撫でられたままそっと顔を上げた。

ぐはっ……めっちゃイケメン。切れ長の目とすっと通った鼻。薄い唇がさらに男を感じてしまう。


ん……?でもなんか……あ! 王様ににてる?


「ねぇ、カイン? 聞いてもいい? 嫌なら答えなくていいから」


「あぁ、何でも」


優しい心地いいバリトンボイスがぁ……妄想をぱっぱっと払いコホンっと咳払いして話をつづけた。


「カインってさ、王様と血縁関係? こ、答えにくかったらいいから!」


「あぁ。兄に当たる」


「やっぱそうなんだ! じゃあカインは王子?」


「いや、俺は王位継承権はとても低い、王家を継ぐことはまずないだろうな。おれは兄カイザーを守る盾になる為に騎士になった」


「そうなんだ。ごめんね。この世界のこと全くわからなくて……あっ」


しまった! と口に手を当てる。

カインがぱっとさくらを見つめた。




「この……せかい?」


「さくらは、どこか違う世界からきたのか?」


「う〜……うん。元いた世界はここと全く違ってて。向こうの世界ではわたしは多分死んでると思う……」


「死……だと? なにがあった?」


「が、崖から飛び降りたんだ……」


さくらのアメジストの瞳に影がかかった。

そこからぽつりぽつりと元いた世界のことをさくらは語ってくれた。

両親が亡くなったこと。親類から邪険にされていたこと。従兄弟に襲われたこと。世界に絶望して身を投げたこと。

さくらの話をだまって聞いていた。


「そうか…辛かったな。大丈夫だ。これからは俺が守る。いや、守らせてほしい」


さくらの腰をつかみぐっとひきよせ腕の中に抱きしめた。気遣うようにそっと。手の中の雛を温めるかのように。背中をとんとんと叩いてくれていた。

じーん……とした温かい温もりにさくらの涙腺がゆるむ。

お母さんに抱きしめられたことをおもいだした。

昔辛いことがあったときお母さんが良くしてくれた。


〘――――ひとりじゃないからね。お母さんがいるから大丈夫よ。

さくら、辛いことがあっても絶対がまんしちゃだめよ。辛い、悲しい、苦しいの思いはお腹にたまってさくらの心を食べちゃうんだから。だからね、こうやってお母さんが背中をポンポンってたたいたらでていくのよ?どう?

――――うん!いやじゃなくなった!〙

そういっていつも抱きしめてくれていた大好きな母。

久々に優しく抱かれた腕はさくらの心を甘く温めた。

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