第7話~トリトマ~

 ~トリトマ~


 佳也よしや綾花あやかに惹かれていることはすぐにわかった。


 だって私だってずっと綾花のことが好きだったから。

 中学生の頃からその姿をいつも目で追っていたことをあなたはきっと知らない。

 クラスでも人気者でいつも綾花の周りには人が集まって来てたよね。それなのに、私と仲良くしてくれることが嬉しかった。

それを恋と気がつくのにはたくさんの時間が必要だった。


 同じ高校に行くために私は死ぬほど頑張ったし、そうまでしてもそばにいたかった。


「高橋先輩のことが好きなの。応援してくれる? 」

 そう言われた時は、自分でも驚くくらい胸が傷んだ。


 柔らかそうな長い髪も、潤んだ瞳も、歌うように笑う姿も、本当は自分のものにしたかった。


 同性の人を愛した私をきっと綾花はわかってくれないと思うし、思いを伝えるのは怖かったの。


 高橋先輩に告白された時は凄く悩んだ。

 でもね、綾花が好きになった人なの。


 手を伸ばせば、綾花に届く気がしたの。


 彼に抱かれる度に、その向こうに綾花がいるような気がしてた私がいる。

 屈折しているのかもしれないけど、そうやって綾花を感じていたかった。


 私を責めることもなく友達でいてくれたよね。


 結婚を決めた私と佳也だけど、死ぬまで一緒にいたいのは綾花、あなたなのよ。


 この思いを伝えることはきっとないかもしれない。


 綾花を抱いた佳也、ううん違う佳也を抱いた綾花を思いながら、私は佳也に抱かれる。


 こんなふうでなくて、柔らかそうな髪の毛や潤んだ瞳に手が届くなら私はきっと死んでもいいと思うはず。


 叶わぬ恋を抱きながら白いドレスを着る私。

いつかこの思いを伝えることが出来たならなんて、思いながら━━


 私もずっと綾花のそばにいるよ。誰よりもあなたが好きだから。


(了)



※ちょびっとあとがき……両片思いの恋なのでしょうね。

前話~イソトマ~と連作でした。これで完結となります。(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*ペコ


 花言葉・あなたを思うと胸が痛む・恋するつらさ


 茎が曲がっていく習性があり、その身をよじっているように見えることからこの花言葉がついた。

 この様子を恋の苦しさにたとえたものといわれます。

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