第4話~シバザクラ~
~シバザクラ~
私にはできない、待つことも、待たないでいることも。
ある日、散歩の途中にふらりと立ち寄ったという風にして、別れはやってきた。
高校生の頃からつきあい始めた私と和也は昨日のよる別れを決めた。
燃えることもなく、静かに流れた二人の恋。
高校の部活で選手とマネージャーとして出会った。
弱小サッカー部の仲間たちとは仲が良く、部活が終わってからの時間が楽しかった。
「ほんまに和也と雅美は仲いいよな、そのまま付き合ったらいいねん」
本当は和也とは仲の良い友達のままでよかった。
駿佑と和也は選手、私と遥はマネージャーとしていつも四人で同じ時間を過ごしていた。
カラオケに行けば二人で歌ったaikoの"さくらんぼ"
確かに気が合うとは思ってたけど、恋愛対象だとは全く思ってもいなかったし、何となくつきあうようになってからも、恋人というより同士という感覚しか持てなかった。
「えっ!雅美と和也くんってキスしかしたことないの?」
遥が飲んでいたコーヒーカップを静かにテーブルに置きながら言った。
「うん、私って魅力ないのかな? 」
確かにそれはおかしいのかもしれないと思う。
高校を卒業してから、地元の専門学校に通い始めた私と少し離れた大学を選んだ和也。遠距離恋愛とは言えない程の距離だったが、月に2、3回しか会えなくなった。
会えば、彼のアパートに泊まるけれど、同じベッドに寝ても和也は私を抱かなかった。
彼の心の中にいるのはきっと私ではない。
認めるのが怖くて悲しくて目を背けていたけれど、もうきっと限界なんだ。
「和也が好きなのは、きっと私じゃないよね、そんなに辛そうにしてる姿をみるのは私は嫌だ。別れた方がいいよね」
ゴメンって言わないで欲しいけれど、和也のくちびるはそんな風に動いた。
また、昔のように友達に戻れるなんて思っていないけれど、たぶん私にとってのアオハルはきっと和也との思い出なのだろう。
それから、数年後。
ウエディングパーティーを開くレストランに、和也はパートナーと来てくれた。
「雅美おめでとう。ホンマに綺麗やで」
先に結婚した遥のお腹には大切な赤ちゃんがいて幸せそうに笑っている。
和也の隣には駿佑が立っていて。恥ずかしそうだけど優しい眼差しでお互いが大切な存在なのだとわかる。
「お互いに幸せになろうね」
その言葉は雨上がりの虹のように、私たちのあいだに優しい橋をかけるだろう。
(了)
シバザクラ(芝桜)
花言葉・臆病な心・合意・一致・忍耐・燃える恋・華やかな姿・一筋
大好きなお花です。
たまたま、先日、出かけた時に綺麗に咲くのをみていたのですが、耐寒性もあるし育ててみたい花です。
(妖怪枯らし女でも育てる事ができそうでw)
誕生花としては4月20日だそうです。
✿四月二十二日の花言葉に添えて……
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