んな事知ってます

綾瀬七重

第1話

多分…人から見た私の世界は金色一色。

だけど実際私が見ている私の世界はもっとずっと淀んだ、鉛色。


「ねぇ、若葉〜。若葉って好きな人いる?」

「いる」

「え!だれだれ!」

「福沢諭吉。もうすぐ渋沢栄一にバトンタッチするのよ」


このし〜ん…って言う空気ね。

「ま…まあたそういうこと言うんだからあ」


私たちの世界はその辺の女子同士の何気ない会話でも自分の家の資産を踏まえた意味で会話する。

ゲスいことをキラキラしたもので覆い隠す世界にうんざりしてとことんゲスくなってやろうとひねくれた18歳の私。一条若葉。

お金持ちってさ、毎日お金使い放題道楽放題って風に見えるけど実際はお互いの腹の探り合いを毎日して、時に友達同士でもマウントを取り合うの。

てか、友達かも微妙。どっちかと言えば、人脈。


つまんないつまんない。毎日つまんない。

でもこういう金絡みの話を持ちかけてくる子はだいたい高校から入ってきた子が多いのよね。

幼稚舎からの子達はあんまり話さない。

多分物心着く前から一緒だったし、顔を出さないといけない場は遊び場だったからあんまり闘争心は無くて、どっちかって言うとチーム意識が強いのよね。


そんな幼稚舎から一緒の奴でも苦手なヤツはいるんだけどね?って私誰に話してんのよ(1人ツッコミ)

突然教室の入口がザワザワし始めた。

もしかして…


「若葉〜。彼氏来てるよ?」

ああ!やっぱり。

「〜〜っ彼氏じゃない!」

その整った顔で女子をキャーキャー言わせてそんで私が嫌がるところをにやっと見てから周りに向けてにっこり笑って

「若葉、電子辞書貸して?」

っていうあんたが大嫌いなのよ!

鳴海穂高!

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