ラストアストラ

あさひ

第1話 星の形《ステラエビデンス》

 澄んだ青に支配された頭上に広がる海は

俺たちの挑戦を煽るように今日も蒼い。

「遠い世界には・・・・・・」

 亡くなった父がこの言葉を響かせていた

それは父である空星加波そらほしかなみの遺言でもある。

「かなたん?」

 不思議そうに覗き込む少女は手に風呂敷に巻かれた弁当を持っており

青い生地に点々と光る星形の模様が少し恥ずかしいが

これもまた父の残したモノの一つで

大切な想い出の結晶そのものだ。

「ああ、未彩鳴みさな姉さんか」

「ああとは何かな? かなたんの最高にして未来の嫁である

お姉ちゃんに失礼じゃないの?」

「めとらないよ?」

「またまた~」

「まあ、いいや・・・・・・ ちょうど空腹だったからありがとう」

「ふふん、今日は唐揚げに挑戦しました」

 風呂敷を解いて中の箱を開けた。

「姉さん・・・・・・ 炭が入ってるんだけど?」

「黒ごまを小麦粉に混ぜただけよ? 焦げてないはずよ」

 恐る恐る一口かじると石を食べているような

音がする。

「黒ごまって固いんだね」

 皮肉を言って困らせようとしたが

思わぬカウンターを受けた。

「じゃあ、私が柔らかくするから頂戴っ!」

 不意打ちにキスされそうになったが訓練で得た反射神経が

それを許さない。

「嫌なの? 私というスパイスが・・・・・・」

 その言葉に必殺技をかます。

「気持ち悪いから弁当作らなくていいよ」

 衝撃を受けた顔で焦りだす姉を他所に食べれるものだけを

口に詰めて候補訓練生になるための施設へと向かいながら去り際に。

「また美味しい弁当作ってね~ 大好きなお姉ちゃんっ!」

 その言葉にからかわれたことを気づき

顔を膨らませて地団駄を踏む。


 この世界では宇宙飛行士は人気の職業であり

子供の夢見る職業で一位を獲得した。

 それ故に空を目指すのは条理と言わんばかりに

訓練に励む空星家は昔から宇宙に関わりのある仕事に就いている名門だが

責任も付きまとうのは仕方ない。

 俺の父もその一人にして天才の研究者の片割れ

宇宙の研究所で事故に遭い、消息不明のまま

遺品だけが戻ってきた。

 母はもうとっくに他界しているため

姉が自立していた家に転がり込めた。

 俺も数年で出る予定だが

姉はついてくるためかその話の翌日から

嫁と名乗りだした。

 俺の目的は「果てのエンドステラ」と父がいつも言っていた

宇宙のどこかにある景色をみること。

 そうこれはプロローグで単なる人物紹介

語られるか否かは結果次第だ。

 つまり語らないかもしれない

だってどうなるかが証明不可能だから。

 明日の空は星が見えたら吉兆だ

じゃあ、いつかどこかで会おう。


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