エピローグ
*
「あの……っ」
「ん?」
『NP-47』へと帰る道中、2階層リビングで祖母の残したデータを端末で整理しているミヤコへ、ヨルは手をグッと握りしめながら緊張した様子で話しかけた。
ミヤコは1人がけのソファーに、ヨルはテーブルを挟んで向かいに座っている。
その様子をザクロとバンジは、艦橋出入り口からそっと見つめていた。
「私その……、ミヤさんに話さないといけない事が……」
「ああ、君がヒュウガ家の人間だって事だろう?」
最悪殴られるかもしれない、と勇気を振り絞って話し始めたヨルだったが、ミヤコは本当にカラッとした様子で軽くそう返した。
「ぴぇッ!?」
バレていた事に仰天したヨルは、見事なまでに青い顔になってザクロ達がいる方を見た。
「んだよ。知ってたなら言ってやりゃあいいもんを」
「怖がらせるかなって思ってね。どうやら逆効果だったようだね?」
リビングまで降りてきたザクロが拍子抜けした様子で言って、それにそう返したミヤコは汗だくのヨルへ申し訳なさげに笑いかけた。
「それはオレにも原因があんな。スマン、ヨル」
「いいえいいえっ! クローさんは心配して下さっただけですからっ」
ペコッと頭を下げたザクロへ、ヨルはわたわた手を動かしてフォローを入れる。
「祖母はね、別に会社経営がしたかった訳じゃあないし、他の研究員ももっと好待遇な所に移籍出来たし、便利な技術が広まるのは良い事だ、って言って気にしてなかったんだ」
「オイオイ、どんだけ器でけぇんだよ」
「ふふ、そうだろう? というわけで、ボクや祖母も恨みとかそういうのないから、ヨルさんも安心しておくれよ」
祖母を褒められて得意げに言った後、ミヤコはザクロにすがりついているヨルへニッと笑ってウィンクをした。
「でも、お家とか引き払ったんですよね……?」
「あ、そこも問題ないよ。クサカベ社の火星開発局の顧問になってたから、社宅に住まわせて貰っていたしね」
もう少しあこぎになれば豪邸に住めたものを、って祖母のご友人達は呆れてたね、と遠くを見る目でミヤコは懐かしげに続けた。
「本当に、恨んではいないのですか?」
「ああ。祖母に訊いたことがあったんだけど、そんな暇があるなら新しい物を作るだけさ、って言ってたし」
「ん。良かったな」
「はい……。はふぅ……」
疲れ切った様子で安堵のため息を吐いたヨルは、長ソファーにパッタリと横になった。
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