ないものねだり

月影いる

それぞれの希望


「身長は高い方が絶対に良い!」

 という子もいれば

「身長が低い方がかわいらしい」

 という子もいる。


「胸が大きい方が魅力的!羨ましい!」

 と言う絶壁少女もいれば

「邪魔なので貧乳の方がいい」

 と言う巨乳少女もいる。


「声が高い方がアニメの少女キャラみたいでかわいい!」

 と言うひともいれば

「声が低い方が落ち着いていて聞いていて癒される」

 と言うひともいる。


「女に生まれたかった」

 という男性もいれば

「男に生まれたかった」

 と嘆く女性もいる。


 

 この世界はこのような『ないものねだり』が沢山駆け巡っている。クリスマスのサンタクロースよりも忙しく、どこかのスーパーで絶え間なくかかり続けているオリジナルソングよりも忙しく、溢れては駆け巡っている。


「あなたは——だから良いよね。」

 羨ましそうに、妬ましそうに声をかけているその人は、果たしてその事実をどう思っているのだろうか。

 人は皆コンプレックスを抱えている。誰かのコンプレックスが誰かの希望かもしれない。その希望は、誰かにとって絶望かもしれない。


「ああ、僕にも鳥のように翼があれば、このどこまでも広がる世界へ飛んでゆけるのに。あの輝く月の光を浴びながら〝陽の当たる場所〟へ手が届くのに。」


 そんなことを呟きながら、僕は風を全身で受け止めて逆さまの世界から『ないものねだり』をするのだ。

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ないものねだり 月影いる @iru-02

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