第30話 お祭りどころじゃなくなりました③
――失敗した。ギルド治安維持部隊・
騒動の中、カレンは一人、失敗を悔やんでいた。
カレンは王族反対過激派を使い、王族を襲わせ、守れなかったと冒険者達の評判を下げるのが目的だと考えていた。
だけど、それは外れた。
彼奴ら、教団の狙いはギルドの壊滅。
ギルド拠点であるこの街に居る人間全て巻き込んで、ギルドを、冒険者達を壊滅させることだった。
――どうすればいい? どうすれば、この街を救える? 考えなきゃ!!
「おい、何をぐだぐだ考えてる」
カレンに声をかけたのはギルドマスターだ。
背に大剣を背負い、正に戦場へ行こうとしている彼の姿にカレンは目を見開く。
「マスター、もしや、戦いにいくつもりですか?」
「つもりでもなく、行くんだ。これだけの魔物相手に冒険者達が疲労で倒れるのも時間の問題だ。それにジッとしてるのは性に合わん」
「・・・・・・・・・・・・すみません」
「カレン?」
「私がしっかりしていれば、彼奴らの動きを見ていれば、こうならなかった!! 私が私が全部悪いんです!!
どうか、事の次第が終わったら私を解雇・・・・・・ 「馬鹿な事を言ってんじゃんねえ!!!!!!」
ギルドマスターが戦いに行くと聞いたカレンは己の失態でマスターにまで迷惑をかけたと思い、とうとう心の内、こんな事態を招いた自分を解雇してほしい旨を伝えようとしたが、それをマスターは一喝する。
「先に言っておくが、お前以上に今の治安維持部隊を引っ張れる奴なんていないから解雇はしないぞ。
それに今はウジウジ悩んでる場合か? 今、お前がする事はこの街の皆を守ることだろ!? 今すべきことをやれ!!」
「で、ですが・・・・・・」
「
「貴方は、護衛騎士団の・・・・・・」
「ライオネルです。今しがた、大広場に居た一般市民を冒険者と共に安全な場所へ避難を終えたところです。レオンハルト様とジョセフィーヌ様は安全な場所へ避難しております」
「そうか。ご協力感謝する」
「ええ、これもカレンさん、貴方のお陰です」
「え?」
驚いたカレンの目に入ったのはニコリと笑うライオネルの姿だった。
偽りの笑顔ではない事を感じ取ったカレンはライオネルの真意が解らず、顔を伏せてしまうがライオネルは気にすることなく言葉を続けた。
「貴方は祭りに来ている一般市民の安全を最優先する事を真っ先に提示し、異議を唱える者が居る中、臆することなく、王族だけでなく市民を守るのは当たり前と言い、黙らせたお陰で避難経路を決めることが出来ました。そのおかげで我々はすんなりと市民の避難そしてレオンハルト様とジョセフィーヌ様を守り抜く事が出来ました」
「当たり前の事をしたまでで、御礼を言われるようなことじゃありません」
「でも、その当たり前を出来ない者も居ます。貴方はそれが出来る人間です。だから、胸を張って進んで下さい。それでは、私はこれで・・・・・・」
マントを翻しライオネルは去って行く。
報告というより、カレンを励ましに来たのだとマスターは悟るとカレンを見る。
カレンはじっとライオネルが見えなくなるまで見ているとフーと深呼吸をし、マスターと力強くを声をかけた。
「カレン、少しは立ち直ったか?」
「はい。あんな風に言われたら凹んでる場合じゃないですよ。失敗は必ずや取り返します!! この騒動を鎮めます!!」
「ああ、そうだ、そうこなくっちゃな!! 俺は大物モンスターが出現してる場所に赴く、お前はどうする?」
「先にメンバーの確認をします、今のところ、怪我人の治療のためにアウラが避難場所に居る事ぐらいしか知りませんから」
「そうか。健闘を祈るぞ」
「マスターもどうかご無事で!!」
立ち直ったカレンはウジウジ悩んでいたのが嘘のように行動を始める。
その姿に安堵しつつも自分の言葉ではなくライオネルの言葉で立ち直った事に自分の娘が独り立ちをしたように思えて少し寂しさを感じたマスターであった。
――――――
スラム街の一画。
イヴァンとヨシュアは剣を交えていた。
双剣のイヴァンをヨシュアは一本の剣、片手剣で相手をする。
双方、お互いに一歩も退くことなく戦っている。
ガキンッ! キンッ! と剣同士がぶつかる音が響く。
イヴァンは双剣を振り上げようとすると、ヨシュアは片手剣で受け止める。
これを何回も繰り返しているのだ。
だけど、今回はイヴァンがヨシュアに話しかけた。
「なあ、お前はどうして、彼奴ら、教団の為に戦っているんだ?」
「・・・・・・お前には関係ない」
「質問を変えよう。お前はどうして、俺を殺そうとしない?」
イヴァンのその質問にヨシュアは動揺からか力を緩めてしまう、そこをイヴァンが気がつくわけがなく、イヴァンはヨシュアを剣で押勝つと蹌踉けたところをすかさず蹴りを入れる。
これにはヨシュアも倒れ込み、蹴られた時に片手剣を放してしまう、イヴァンはヨシュアの片手剣を拾うとそれをヨシュアの首元に近づけた。
「もう一度言うぞ。どうして、俺を殺そうとしない? 教団の奴等は敵には容赦ない、邪魔をしようとする者は皆殺しだ。それなのに、お前には殺意が全くない」
「・・・・・・・・・・・・」
「答えたくないなら、俺の予想を言って良いか? お前は、教団が行う狩りの被害者だろ?」
ヨシュアは目を見開き、イヴァンを見る。
その表情はどうして解ったのか? どうして知っているのか? と言っているようだった。
「お前、その様子だと俺が彼奴を、教団の奴を睨んでたのを気付いてなかったな? まあ、今はそれは置いといて・・・・・・。
あの子、ペチカちゃんを助けるために手を組まないか?」
「はっ・・・・・・?」
イヴァンの提案にヨシュアは信じられないといった表情をし、イヴァンはそんなヨシュアを見てニヤリと笑った。
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