お助けMEN

わっふるばくばく

第1話 夏の川で、JDをお助け!

 私、エミ!大学1年生!大学のサークルの同級生8人で川にBBQしにきた!!

 今さっき車で指定の場所に車をサイトに置いて、これから皆でどうするか話し合うところだ。...と思っていたら、リーダー格の男子の頭の中にはほとんど何をするのか決まっているのか、次の一言で話し合いは終わった。

「んじゃ~、俺とタケシはコンロとかレンタルしてくる。他皆でなんかやっててくれ」

 そうしてリーダー格のジンは、タケシと共に少し離れた管理棟に向かって歩いて行った。私たちはひとまず、スーパーで買った肉が入ってるクーラーボックスやら、持ってきた折りたたみの椅子やらを車から降ろしたが、積み荷はそのくらいのものでやることが無くなってしまった。

 早く川に行きたいなと思ってそわそわしていると、フトシが会話を切り出した。

「皆てきとーにどっか探索しててもいいぞ。俺が見張りやっとくから」

 その言葉に甘えて、私とコウミで川を探索しに、あと3人は他の客がどういう事をやっているのか軽く見に行くことになった。


 BBQ場に隣接している川は比較的歩きやすい岩場で、流れはやや速く、都会で見る川と比べて水が明らかに綺麗だった。さらには空気も綺麗だし、こういう非日常的空間にいるとワクワクしてくる。

「晴れてよかったね~。熱いから川に足でも突っ込もうよ」

コウミはそう言いながらサンダルを脱がずに川に突っ込んだ。私も同様に後に続く。

「ひゃ~冷たい!!」

液体になった氷みたいだと思ったが、段々慣れてきて心地よさを感じてきた。手も突っ込んでみて、冷え冷えを楽しんでた私はいたずら心が湧いてきて、近くに立っていたコウミに水をかけた。

「ツメタッ!!」

コウミは少し離れたあとすぐに笑い、仕返しとばかりに水をかけ返してきた。

 私たちはしばらく水の掛け合いを楽しんだ後、川を上がった。やや服が濡れたが、互いに汚れても良い服で来たし服の下は水着である為、そこまで濡れた事を気にしていなかった。

「早くお昼食べて、皆で川遊びしたいね!」

その一言に同意し、私たちは皆の所に戻ろうと歩き始めた。

...が。


「チョチョイチョイチョイ、ねぇねぇお姉さんたち、俺らと遊ばな~い?」


 私たちの左側からやってきたガングロの金髪と銀髪、そして茶髪が2人の計4人のチャラ男たちがいきなり声をかけてきた。あぁ、本当にこういう絵に描いたような川遊びチャラ男が現実に存在するんだなと思いつつ、手短にあしらう事にした。

「すみません、私たちサークルの友だちと来てるんで」

金髪がきょとんとした顔をした。

「え?周りに君たち以外いないじゃん?嘘はダメでしょ~??」

めんどくさっ、と思いつつ真顔を貫いたが、コウミは顔に感情が出てしまっていたらしく、銀髪が近づいてきた。

「あ?何嫌そうな顔してんだよ?声かけてもらってよぉ??」

「あぁ、そんな顔してました?すみませんね」

でわ、っという感じでコウミは私の手を掴み逃げようとすると、今度は金髪が前に颯爽と走り込み、通せんぼをしてきた。

「おいおい俺らと遊んだ方が得だぜ?特にそこの銀髪、リュウは怒らせたままだと後々そちらにとって面倒な事になるだろうしなぁ?」

銀髪はコウミの横に近づき左腕を掴み上げた。彼女は引っ張られてしまい、私と繋いでた手が外れてしまった。

「やだっ!!放して!!」

抵抗するも無駄のようで、銀髪はニヤニヤしながら楽しそうに、そして楽そうに掴む腕を放さなかった。

「エヘヘェ!!!嫌がる女の表情はたまんねぇなぁ!!」

私は急いでコウミの胴体にしがみつき、無理矢理銀髪から引き離そうとしたが、全く歯が立っている気がしなかった。

「観念しなぁ?今日は6人であそぼぉぜぇ??」

周りを見渡すも、10時くらいというやや早い時間帯であるせいか人影が見えず絶望感を感じた。

「誰か助けてぇ!!」

私は全力で叫んだ。


「お困りのようだね?」


 私の後ろの方から、声が聞こえた。抱きついた状態のまま後ろを向くと妙な恰好をした男が立っていた。びしょ濡れの体にびしょ濡れのジーパン。顔が見えないように顔面に巻かれている白いタオル。そして190cmくらいの身長と、鍛え抜かれたのであろう筋肉隆々の肉体。

「な、なんだてめぇ」

銀髪は警戒したのかコウミの腕を放し、マッチョのから少し離れた位置に立った。

「なに、助けを求める声が聞こえたのでね。川でスイミングを楽しんでいたのだが、上がってきたのだよ」

言葉に訛りが無いから日本人であろうが、外国人のようにオーバーなリアクションをつけながら話すマッチョ。彼の態度と、興が削がれたことに腹を立てたのだろう。銀髪がマッチョに近づいていった。

「てめぇは関係ねぇんだよ引っ込んでろ!!」

瞬間、銀髪はマッチョの鳩尾目掛けて右ストレートを繰り出した!しかしマッチョは華麗な身のこなしで銀髪の右側によけ、右手で右腕を捻り上げ、左手で髪を鷲掴みにした。

「イテテ!!何すんだやめろ!!」

「やめるのは君の方じゃないかね?ちなみにまだやる気かい?」

「あぁ??ったりめぇだろうがぶっ殺すぞ!?!?」

マッチョはその言葉を聞いて、何を思ったのか銀髪を連れてそのまま後ろに後ずさりし、川に入っていった。

「なんだ?何をする気dガボボボボ!!!!」

マッチョは水中に銀髪の頭を突っ込んだ!!

私とコウミはびっくりして口に手を当てた。他の男3人も驚きを隠せず口を大きく開けていた。マッチョは何故か銀髪の頭を川に入れながら私の方に顔を向けていた。

 10秒ほど経った頃、暴れていた銀髪の頭は水中から出された。

「ッゼーハーゼーハー。て、てめっ、なにしやがんだ!!」

結構苦しかったらしく、息が荒れている。マッチョは顔を銀髪の方に向けた。

「参ったかな?」

「あぁ!?誰が参ったって!?!?」

「そうか」

再びマッチョは銀髪の頭を水中に突っ込んだ。また銀髪は暴れていたが、今度は10秒ほどでやめるつもりはないらしく、ずっと突っ込んでいた。

 しばらく呆然と見ていると、銀髪が動かなくなり、それを1秒ほど確認したマッチョが銀髪の頭を川から出し、岩場に回復体位で寝かせた。

「ハッハッハッ!諸君、心配するな。彼はあと30秒ほどで起きる」

何故か少し笑いながら、マッチョは近くに捨てられていた浮き輪の空気入れを銀髪の口に突っ込み、シュポシュポし始めた。そしてすぐに銀髪は咳き込み、意識を取り戻した。

「ゴホッゴホッ!!、テメ!!、俺が死んだらどうすんだ!?」

「心配せずとも人間はそんなに簡単に死なんよ」

マッチョは首をコキコキ鳴らして空を見上げ、また銀髪の方を見た。

「参ったかな?」

ちょっと前に聞いた質問をまた口に出したが、銀髪は睨んで反抗した。

「アァ!?誰も参ってねぇよブッコロシテヤル!!」

銀髪は立ち上がろうとしたが、再びマッチョは髪と右腕を掴み、川へと後ずさりして入って行った。

「テメ!!ヤメロ!!ヤmガボボボボボ!!!!!」

また沈められた仲間をさすがに助けるべきだと判断したのか、金髪が叫んだ。

「てめぇ!!やめやがれ!!」

そして金髪はマッチョの許に走っていったが、マッチョは右足をバレリーナの如く天高く上げ、金髪の頭に踵を叩きつけた。

「ペプシッ!!」

前のめりに転び川の中に突っ込んだ金髪を見て、マッチョはそのまま足で頭を押さえつけて沈めた。金髪も暴れているらしいが、マッチョの右足は器用に抑え込むような動きをしていた。

 段々異常な事態に慣れてきて逆に冷静になった私。望んでいない非日常を見せつけられて生気を失ったような目をしているコウミ。こいつにかかって行っても沈められるだけだと悟って死んだ目をしながら傍観する2人の男。そして何故か相変わらずこちらに顔を向けながら男2人を沈めている屈強な男。場はカオスだった。

 しばらくしてまた銀髪は動かなくなり、マッチョはその瞬間に足をどかして右手で気を失った金髪を水中から引き揚げた。川から上がり、2人を回復体位にして空気入れを片方づつに突っ込んで、2人を復活させた。

「別の川が見えた...」

金髪がボソっと呟いたのを聞いたマッチョは一言だけ発した。

「参ったかな?」

2人は俯いたまま動かず、良くみると銀髪の方は少し涙目になっていた。もう反抗しないだろうと判断したらしいマッチョは、顔を上げて両手を叩いた。

「さぁさぁ!これでこの場はお開きにしようじゃないか!双方が見えない位置になるまで私はここを動かないから各々散ったまえ!!」

やっと解放されると思い、私はマッチョに軽くお辞儀をし、コウミと皆がいる方に足早に歩き始めた。


 しばらく歩いて、ふと後ろを振り返ってみると、男4人組は別方向に歩いて林の中に入っていた。そしてマッチョはこちらを眺めている。

「今思ったんだけどさ」

コウミが疲れた様子で何か合点がいったようにこちらを見る。

「あいつがやたらエミを見てたのって、服が濡れてて透けてるからじゃない?」

真相は本人に聞かないと分からないが、まぁなんとなくありえそうだった。しばらく歩いて今度は私がとあることに気が付いた。

「あ、そういえば」

再び後ろを振り返ると、マッチョはいなくなっていた。多分川を泳いでどっかに行ってしまったのだろう。

「どうしたの?」

一緒に振り返ったコウミが尋ねる。

「いや、お礼言ってなかったなと思って」

ん~、と、ちょっと彼女は考える。

「なんか状況に疲れさせられた感じがあるし、良いんじゃない?そりゃまぁ助けてもらえたのは確かにありがたかったけど」

一理あるかもしれないと思いしばらく考えた後、気にしない事にした。とりあえず私たちは、望む非日常を楽しむ為、サークルの皆がいる場所に足を進めた。

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