第22話 彼女はヒーロー

 「あーあ、最後まで聞かずに行ったよ。青葉、そろそろ覚醒しなよ。追いかけないと。」

 目がゆっくりと見開くのを見て、

 「俺、あいつが何であの時、あんなに怒ったのか、やっと分かった。俺の言い方も悪かったのかもしれないけど、何で最後まできちんと聞かないんだ。俺、あいつが、親父似だって言おうとしただけなのに。あいつの家の父親、めちゃくちゃカッコイイんだよ。まったくちゃんと聞けよ。俺だけのせいなのか?」

 「瞳子ちゃんだから、仕方ないよ。ほら、理由も分かったんだし、行くよ。」

 「納得できねー。」

 ぼやきながらも、後を追うのだろう。

 歩みは、病院の入り口の方へ向っている。

 「最後、何て言おうとしたんだ?」

 こちらをジロッと睨む青葉は、不貞腐れている。

 「・・・落ちてくるあいつを見て、戦う女神がいたら、こういう奴なんだろうなぁて、そう思ったんだ。本当は、ヒロインの方が嬉しいかもしんないけど、俺には、ヒーローに見えた。こんな危ない事して、体なんて傷だらけで、手を差し伸べても拒否するんだぜ。俺が知ってる女子は、煩くて、ウザくて、そりゃ、一生懸命やってる奴等もいるけど、めんどくさいっていうか。でも、あいつは違う、俺から見ても、カッコイイんだ。」

 横でクスクス笑う、朔を見て、

 「聞いてなんで笑うんだよ。行くぞ。」

 ずんずん前を歩く青葉を見ながら、

 「確かに、カッコイイ。でも、多分、本人には言わない方がいいかもよ。」

 青葉に追いつきながら、二人でニヤリと笑う。

 彼女は確かに、悪い奴をやっつけたヒーローだ。

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