四章 異種異例
「バルト君、誰も傷付かない答えを探すんじゃなかったの?僕、少し怒ってるからね」
クリスはバルトに真剣な顔で忠告した。
「すまん、焦りすぎた」
「お礼はここにキスで良いよ。でもこれで状況はまた僕達有利に戻ったかな?どうするダフネさん?」
クリスは自分のほっぺを指差しながら、ダフネに尋ねた。
「剣らしきもの持ってなかったから油断したわぁ。どこから出しはったん?」
「召喚士は使い魔しか召喚出来ないなんて、誰が言ったの?」
「通りで嫌な匂いのする剣や。それに、武器召喚出来るのはごく一部の召喚士、まさかクリスはんが出来るとは夢にも思わんわ」
「随分甘く見られたね。それとも……契約違反するような使い魔だからまともな判断は出来ないのかな?」
「……どういう意味です?」
「ダフネさん、ハンナの魔法効かないでしょ?それ使い魔がたまに持ってるスキル【
この世界の魔法の影響を一切受けない魔界独自のスキル。
うちの使い魔も持ってるからすぐに分かったよ」
「なら……余計に生きては帰せまへんわ」
さっきまで
「本気でいかせてもらいます」
クリスの前まで一瞬で間合いを詰め攻撃するが、クリスは軽く避け反撃に出る。
「クリス、どういう事だ?」
「ダフネさんは、使い魔だよ。そして説明はめんどくさいから今はしないけど、召喚した召喚士はもうこの世にいないと思う」
「そんなことあり得るのか!?だって使い魔は召喚士の魔力がなくなれば消滅するはずじゃ……」
「たまにいるんだよ、原因はそれぞれだけどね。そして一つだけ共通してるのは、その使い魔は異常に強い」
クリスはダフネと闘いながら、バルトの問いに淡々と答える。
「会話をしながらとは、余裕がおありですな。腹立たしいわぁ」
ダフネがクリスを睨み付けながら、剣術の中に体術を混ぜ、頭目掛けて蹴りを繰り出した。
「野良の使い魔に負けたら、恥ずかしくて召喚士続けられないよ」
蹴りを軽く受け止めながら、クリスはダフネの顔目掛けて全力で拳を打ち込む。
「あらら、ガードされちゃった。頭吹き飛ばそうと思ったのに」
ダフネを一瞬でネヴィル達のところまで吹き飛ばし、クリスは残念そうな顔をした。
「ネヴィルはん、これは少し分が悪いですわ。一旦引いた方が身のためです」
「はぁ!?何で俺らがこんなパーティーから逃げなくちゃいけないんだよ!」
撤退を提案するダフネにネヴィルが大声を荒げる。
「無理してでも闘いたいならご勝手に。わっちはパーティー抜けさせて貰うだけです。クリスはん、また近いうちにお会いしましょ」
そう言うとダフネはダンジョンの奥に向かって歩き始めた。
「おい、ダフネ!何勝手なことしてるんだ!戻って来い!」
ネヴィルはダフネを引き止めるが、止まることなく暗闇へ消えていった。
「ちっ!……くそったれ!おい、バルトとかいう犯罪者、お前だけは絶対に殺してやる…………お前はさっさと起きろ!」
ネヴィルはバルトへ捨て台詞を吐きながらジースターを蹴り起こし、3人でダフネと同じ方向へ歩き始めた。
「市民を脅すのが勇者の仕事だって覚えとくよ。後もしミルコさんの店に何かしたら……絶対に殺すからな?」
バルトは暗闇に消えていくネヴィルの背中に忠告した。
「ふぅ……まじで危なかった……」
思わず、バルトはその場に座り込んでしまう。
「そうかな?ダフネって子は強かったけど、他はそうでもないんじゃない?」
クリスが剣を魔方陣に戻しながら、キャスを召喚しネヴィル達の匂いを覚えとく様に指示した。
「それは案外分からないわよ?かけ方が甘かっただけで、効果魔法無効は誰でも出来る魔法じゃないわ。
それに私があのジースターとかいう男にかけた催眠魔法は、並みの冒険者なら2週間は寝る強さだったはずなのにすぐに起きたでしょ?
いくら無効魔法が多少かかってたといえ、あまりに解除まで早すぎる」
「今回は相手が舐めてかかってきたから救われた感じか……それよりクリス!そんなに近接戦強いなんて聞いてないぞ!?」
バルトはクリスの方を向いて抗議する。
「別に強い訳じゃないから言わなかっただけだよ。それよりバルト君、忘れてないよね?」
「いや、十分強すぎるだろ……お前は周りに
バルトはゆっくり立ち上がり、クリスに近付くとほっぺに軽くキスをした。
「バ、バルトさん!?い、今何をしました!?」
「え?普通にキスだけど?男同士だからおふざけみたいなもんだし、クリス見た目は女子だから不思議と抵抗ないんだよな」
ハンナが驚いて動けずにいるのを見て、クリスは勝ち誇った顔をした。
「ハンナもキスして欲しいなら言えば良いじゃない?バルト、私の胸にもキスしなさい」
リリィがそう言って胸を突き出す。
「いや、したいけど出来ないから。てかそれはもはやキスじゃないから」
バルトが冷静に受け流す。
「バルトさん!リリィの次で良いので、私は口が希望です!」
「いや、順番待ちでもないから。てか駄目女のテンプレみたいになってるから」
バルトが一通り突っ込みを終えると、いきなり頭の中に声が流れた。
【こちら騎士団本部、只今街が大量の魔物に襲撃されています。近くにいる冒険者は至急応援に来て下さい】
「騎士団本部!?俺達を誘き寄せる罠か?」
「いえ、本当に不味い状況みたいね。この規模の念話を使うなんて大掛かりすぎるし、すでにこのダンジョンの周りにもそこそこ魔物がいるわよ」
リリィが感知魔法でダンジョンの周りを探った。
「バルト君、制限時間まであと何分位?」
「あと3分ってところだな。今のうちに指示を出しておく。外に出たら、各自自分の一番大切な所を守りに行ってくれ。今はパーティーで動くと逆に動きにくい」
「分かった。ただ僕の実家は心配する必要はないから、ハンナと一緒に教会へ行くよ。教会の方が助けがいるはずだから」
「ありがたいですが、何故クリスは私が教会に行くと分かりましたの!?どんな魔法を使ったんですの?」
ハンナが驚き、クリスに詰め寄った。
「それわざとじゃないなら、まじで恐ろしいんだけど……」
クリスがハンナにドン引きしている。
「バルト、私も自由に動けるわ。何か指示はあるかしら?」
「ならリリィは悪いが、ミルコさん達の様子を先に見に行ってくれ。そしてある程度片付いたらミルコさんの店に集合だ」
バルトの説明に3人は頷いた。
「あんまり意味はないと思うが、仮面を用意したから着けてくれ。俺も大丈夫だと思うが、母さんの様子を見たらすぐにミルコさんの店に向かう」
バルトは土魔法で作った真っ黒な能面をハンナ達に渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます