二章 世界は勇者のために

【ギルドの掟】



 ・任務中の死亡は自己責任とする。


 ・所属パーティーは掲示板の依頼を全て受けることが出来る。(実力以上の依頼を受けても良いが、達成出来なかった場合はペナルティとする)


 ・パーティーは4人までとする。(合同任務は例外とする)


 ・月に3件以上の依頼を受けなくてはいけない。(長期任務中は免除する)


 ・ギルドからのパーティー指名依頼は拒否できない。(正当な理由があれば拒否可能)


 ・ギルド内の施設は自由に使用できる。(詳細はギルド内の地図参照。使用方法は各管理人まで)


 ・勇者パーティーからの依頼は最優先とする。(例外なし)


 ・その他質問は受付まで。




 パーティーひょうの裏に書いてあるギルドの掟を読み、バルトは少し疑問を覚えた。


 これだけ例外があるのに、勇者パーティーの依頼だけは例外なしか……


 確かに最優先事項だとしても、何か引っ掛かるような気がする。


 勇者といえど、ミルコの店の件といい、あまりにも優遇のされ方が異常な気が……


「分かりやすいルールでいいんじゃないかな?」


「まぁな…って何してるんだ?」


「お気に入りの場所に座ってる」


 クリスがバルトの膝の上に座っていた。


「クリスさん、あなた本当にパーティーを乱したいのね?」


 そういうとハンナは魔法を展開しようとする。


「ハンナちゃん、僕は男だよ?別にやましいことをしてるわけじゃないんだけど?」


「それは!…そうですけど……」


 ハンナが魔法展開を収め悔しそうにしているのを、クリスはクスクス笑った。


「僕、男の子だからバルトくんの体は良くわかってるからね?」


 クリスは少し挑発するようにバルトの耳元でささやいた。


 ふむ……男の娘も悪くない……


 しかしパーティー内ではその魅力も0になってしまう。


 そもそも職場恋愛なんてめんどくさいし、パーティー崩壊に繋がりかねないからだ。


 俺は前世で散々そういうのを見てきた。


 不倫、浮気、そういう色恋で身を滅ぼしていった上司や同僚を腐るほど見てきた経験がある。


 だからこそ、この世界で俺は会社だけには恋愛を持ち込まないと心から決めている。


「わかった、わかった。とりあえず読みにくいから降りてくれ」


 バルトは、さも興味がないようにクリスを膝から降ろす。


「あらら…見た目より真面目なのかな?」


 クリスは少し不貞腐ふてくされながら降りて、自分の席に戻った。


「ギルドの中は時間がある時、各自見といてくれ。とりあえず今日は簡単そうな依頼を受けて、各自の実力を確認したい。それでいいか?」


「意義なーし!」「いいわ!」「賛成ですわ!」


 三人が同意し、依頼が張ってある掲示板に向かうことにした。






「これ……まじか…………」


 依頼が貼られている掲示板を見てバルトは絶句する。


 依頼の内容がほぼ勇者に関するものしかない。


 ・勇者の買い物の護衛


 ・勇者パーティーの必要アイテムの調達


 ・勇者のマッサージ(巨乳限定)


 etc……




 魔王が誕生すると、依頼に偏りが出るとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。


 内容が薄い上に、各自の力を見れるような依頼が少ない。


 そして勇者関連の依頼は基本的に報酬が激安である。


 どんだけ国は勇者贔屓なんだよ。


 しかも最後は完璧に勇者の私利私欲しりしよくの依頼だし。


 正直あのクズ勇者とは関わりたくないんだよなぁ……顔がバレてるから何かとめんどくさくなりそうだし……


 バルトが考えていると、ハンナが声をかけてきた。


「あまり内容がある依頼がありませんね。無理をして今日受ける必要はないのでは?」


「そうなんだけど、1ヶ月以内に3つは依頼をクリアしないといけないからね…早めにパーティーの実力は知っておきたいんだよ」


「じゃあ、今日は無理しないでハンナちゃんがマッサージの依頼受けたら?ビッチなんでしょ?勇者様ならハンナちゃんも納得じゃないの?」


 クリスがハンナにニヤニヤしながら、依頼の紙を指差した。


「え!?いや、あの……私基本的にカッコいい人じゃないとぬ、濡れませんから!却下です!」


 クリスよ…あまり苛めるな……そしてハンナよ……キャラ作りとはいえ、流石に引くぞ……


「あまりふざけるのは感心できないわ。バルト、これなんかいいんじゃない?これなら各自の実力もわかると思う」


 リリィが魔物討伐の依頼の紙を持ってきた。


 ・勇者の進行経路の魔物の討伐


「確かに……これにしてみるか」


 リリィよ……まともなのは大変良いが、まずはちゃんと服を着てくれ……周りの視線が痛い……


 そのあとも3人で色々とやりあっていたが、バルトは無視をして受付に向かった。

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