1-3 聖女の独白。

【聖女視点】


「……ふぅ。これでお父様の言いつけ通り、あの魔女をこの世から消し去ることが出来ましたわね」

「は、はは。やった、やったぞ! これでボクは自由の身だ! あの口煩くちうるさい女が居なくなればボクは……」



 はぁ……ほんっと、バカな男。


 あの魔女が世界に災いをもたらす最悪の存在だったとしても。王妃としてあれレイカ以上に相応ふさわしい女なんて、この世界の何処にも居なかったでしょうにね。――勿論、ワタクシも含めて。


 それに……最後までこの王子のことを一人の人間として本気で心配していたのは、他でもないあの魔女だけだったわよ?

 ワタクシだってお父様に言われなければ、このようなクズの妻になろうだなんて微塵も思いませんでしたわ。



「さて、サーディスよ。改めて民には聖女であるこのミラクリッド=セカンダリアがあの災厄の魔女を打ち倒し、めでたく次期王妃として我が国を支えることになったと伝えなければな」

「そうですね、父上! 未来の偉大な王として、民たちを安心させなくては!」

「そんな……レイカが……なんてことを……」



 こんな国王とバカ王子のために、大事な娘を捧げたグランデ公爵が膝をついて嗚咽おえつを漏らしている。

 この世界の為にあの魔女を追放することが必要だったとはいえ、たった一人の娘を処分されてしまうとは……そのことに関しては少しだけ同情いたしますわ。



 ま、それはともかく。

 ワタクシも早くお父様に報告をしなくてはですね。



 ふふふ、お父様はワタクシを褒めてくださるかしら。なにしろ、ワタクシのお陰で世界が平和になるのですから……。



 そう、神の言うことは絶対なのです。

 つまり神の意思を聞くことが出来るお父様は神に等しい、偉大なお方。

 孤児だったワタクシにとって、唯一無二の家族。



 ――だからレイカさん。

 どうか、ワタクシのことを恨まないでくださいね?




「……? 何かしら、この違和感」



 教会にいた全員が無事に儀式が終わったことに安堵し、気も緩んでいた頃。

 ワタクシがこの場から立ち去ろうと教会の出口に向かおうとした瞬間、女神像の方から強大な魔力の高まりを感じ取りました。



「何かしら? この不思議な力は……ま、まさかっ!?」

「おい、なんだこの光は!! ミラクリッド嬢、これはいったい何ごとなのだ!」

「ミラ!! キミの仕業しわざなのか!?」



 何を馬鹿なことを!

 そんなの、ワタクシが知るわけないじゃないですの!


 そもそも、ワタクシの力は一度使ったら再使用するまでにチャージが必要なんですのよ!? なのに、このワタクシの力を遥かに超えるこの魔力の高まりは――!!



 そんなことを考えている合間にも、女神像から現れた光球は大きく膨らみ、全方位に拡散していく。


 そして教会を――この場に残っていたワタクシたちを――白く暖かい光が、優しく包み込んだ。


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