【核心】物語の鍵を握る獅子堂莉緒

〈五月雨〉

 各ストーリの解説と主要登場人物の紹介も一通り終えたところで、『機巧探偵』全体の鍵を握る最重要キャラクター、獅子堂莉緒について紹介します。


〈莉緒〉

 ついに来たか、私の時代……!


〈五月雨〉

 既に死んでいる本人を模したナビゲートプログラムが何イキっていやがるのでしょうか。


〈莉緒〉

 本物とほぼ同じ思考演算能力を持った代弁者なのだから大目に見てよ。


〈五月雨〉

 まぁ、楽屋裏の茶番回なので良しとします。でないと話が進まないし。

 それでは改めまして。

 この『機巧探偵シリーズ』を全編通して読まれている方は既にお気付きでしょうが、「獅子堂莉緒」の名前が一度も出なかった事はありません。

 故人でありながら如何に彼女がクロガネ達に大きな影響を及ぼした存在であるか、そして物語の鍵を握る重要な存在である事も薄々気付いた方もいらっしゃると思います。


〈莉緒〉

 私に関してはネタバレスレスレの超低空飛行で解説を行っていくので、例え楽屋裏でも物語本編の謎や設定に触れる話題を避けたい方は、このコーナーを無視して最後のチャプターである【おわりに】まで飛んでください。


 ……警告はしました。


 それでは私こと獅子堂莉緒についての解説を始めます。

 まずは人物像の紹介から。



 ***


獅子堂莉緒ししどうりお(故人・享年15歳)


 獅子堂家本家筋の長女。重い心臓病により若くしてこの世を去った天才科学者。

 メインヒロインでガイノイドである安藤美優のAIを開発・育成した自称美優の母親であり、現役のゼロナンバーだった当時のクロガネが守っていた少女である。


 ビジュアル的な元ネタは無いが、色白な肌・華奢な体躯・艶やかで長い黒髪と、「深窓の令嬢」「薄幸の美少女」というイメージで描かれている。

 病弱なのだが、体調が良い時の言動は反動でだいぶアグレッシブ。


 病弱ゆえにインドアなので、映画や読書、ゲーム、料理などが趣味。

 当時、彼女の専属で護衛だったクロガネの趣味にも多大な影響を及ぼした。


 名前の由来は、作者の過去作であるファンタジー小説(未完・未公表)のメインヒロインの名前から引用。

 「莉緒」が百獣の王ライオンを連想させる名前であることから、「獅子堂」という如何にも強い力を持った名家が生まれ、その令嬢として「獅子堂莉緒」というキャラクターが生まれた。

 余談だが、悪役として「莉緒」と対になる男性キャラ「玲雄」もほぼ同時期に考案されている。



 ~作中の裏で築き上げた莉緒の実績~


・世界七番目の高性能自律管理型AI〈サイバーマーメイド・日乃本ナナ〉の基礎設計を手掛ける。


・当時生粋の暗殺者だったクロガネに人間らしい心を目覚めさせる。


・研修医だった真奈の論文を見付け、彼女を専属医として引き抜く。


・クロガネが保護したナディアに日本語を教え、姉妹のような関係を築く。


・他ゼロナンバーのほぼ全員と良好な人間関係を築く。


・本来は自身の延命手段として開発した疑似心臓をクロガネに移植。


・疑似心臓をエネルギー源とした新型義手を真奈と共同開発し、クロガネに装着。


・デルタゼロと共同開発で自身の分身ともいえるガイノイド、安藤美優を開発。


・死後、自身の子宮を美優の義体へ移植するようデルタゼロに遺言を残す。



〈五月雨〉

 とても病弱とは思えない、コミュ力がカンストしたお嬢様ですね。

 だからこそ周囲から愛されて支持されていたのでしょうが。


〈莉緒〉

 ここまでは本編で解る私の行動記録というか生きた証ね。

 残り時間が少ない中、必死に人生を謳歌して駆け抜けた剛の者かつリア充な女の子よ。


〈五月雨〉

 病弱とは一体……いや、だからこそ後悔しないよう必死に生きたんですね。

 クロガネが今も貴女を敬愛し、芯の強い女性を好むわけです。


〈莉緒〉

 どやぁ。


〈五月雨〉

 そして調子に乗る時は有頂天になってドヤ顔を決めたりする所も、美優に引き継がれたわけですね。


〈莉緒〉

 母娘ですから。


〈五月雨〉

 さて、莉緒の来歴を元にここで彼女の真意を確認しましょう。

 差し当たってまずは、『疑似心臓』と『安藤美優』の存在について。


〈莉緒〉

 どちらも主役二人に深く関与するから当然といえば当然よね。

 『1』の作中でAIだけの存在だった美優と話した通り、疑似心臓は元々私に移植する目的で造った特殊なものよ。


〈五月雨〉

 自身の延命手段を自ら開発したと。

 いくら天才設定でも無理があるでしょう、オーパーツ同然な疑似心臓の知識と技術は一体どこから?


〈莉緒〉

 …………。

 当時も今もありえない、人類の叡智を上回る知識と技術の結晶よ。


〈五月雨〉

 それは単なる盛りに盛った大袈裟な誇張表現ですか?


〈莉緒〉

 大袈裟に言いたくもなるわよ、あれは私の最高傑作なのだから。

 勿論、美優もね。


〈五月雨〉

 その美優も疑似心臓とほぼ同時期に並行して開発を始めたとお見受けしますが?


〈莉緒〉

 ええ、そうよ。

 私の延命処置として最初に着手したのが、プランAの疑似心臓の開発。

 プランBで美優を造り始めたわ。


〈五月雨〉

 …………嗚呼、なるほど。


 貴女、



〈莉緒〉

 私もこの世界も創ったのは貴方でしょ、作者。

 私が最低なら、貴方も最低よ。


〈五月雨〉

 …………今更ですけど良いですか?


〈莉緒〉

 はい。


〈五月雨〉

 こればかりは対談形式の解説って無理がある!


〈莉緒〉

 ほんとそれな、もうメッタメタw

 ボロが出ない内にさっさとまとめよう。


〈五月雨〉

 ですねw

 ……現段階では莉緒の目的はまだ謎のままですね、『5』以降で少しずつ明らかになると思います。


〈莉緒〉

 物語の鍵を握る存在であるのが私ならば、私の目的に辿り着く鍵こそがクロガネに移植された疑似心臓と美優の存在よ。


〈五月雨〉

 主役である機巧探偵の二人の存在が物語の核心に迫ると。

 果たして獅子堂莉緒の目的とは?


〈莉緒〉

 待て次回!

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