エピソード解説③/青春の裏で戦うヒーロー達
【三作目】
機巧探偵クロガネの事件簿3 ~剣鬼と青春の学園祭~
〈五月雨〉
それでは『3』の解説です。前作『2』で少し触れた通り「美優が学校に通う」というネタを繋いだ感じですね。
〈莉緒〉
『2』が夏休みの時期で、『3』は夏休み明けの新学期……九月~十月の間に入る話よ。作中の季節は秋。時間が経つのが早いなぁ。
〈五月雨〉
そんな時期に美優が編入したら、早速一大イベントである文化祭がやって来ます。
『3』はそこに焦点を当てた感じですね。
〈莉緒〉
だけどそこは『機巧探偵』、ただの青春学園もので終わるわけがない。
何たって作者はアクション映画が大好きな五月雨皐月だぞぃ!
〈五月雨〉
何故そこで私を強調? いやまぁその通りですけどww
〈莉緒〉
それじゃあ解説、行ってみようっ。
【プロローグ】
〈五月雨〉
いきなり教室で同級生から無茶な依頼をされます。
予定通り女子高生デビューを果たした美優の視点から物語が始まります。
〈莉緒〉
同級生からの依頼内容は学園ものでお馴染み、「廃部寸前の部活動を救ってほしい」というお話ね。これまたベタで鉄板で王道ね。
〈五月雨〉
ベタで鉄板で王道だからこそ、しっかり丁寧に作ったつもりです。
〈莉緒〉
それに派手なアクションが加わると?
〈五月雨〉
はい、解っているなら次行きましょう次。
〈莉緒〉
本当に王道好きだなぁw
【第1章】編入と勧誘
〈五月雨〉
いつもの鋼和市の説明を軽く入れてからクロガネ探偵事務所でのやりとりですね。
続編の序盤に世界観や舞台の説明は必ず入れるようにしています。
〈莉緒〉
それはお約束よね。あらすじとかは大事。
さて、学園ものにおいて美人な転校生(作中では編入生)はお約束のネタよね。
現実でも突然やって来た転校生に多少なりとも興味を抱いた経験は読者の皆さんにも覚えがあるかと。
そして過保護な主人公w
〈五月雨〉
今回のクロガネは親馬鹿を拗らせた保護者になってますw
建物の屋上から双眼鏡で学校の様子を見るとか下手したら通報ものですが、監視カメラや巡回中のドローンなどのセキュリティの死角を突いている辺り無駄に玄人ですw
〈莉緒〉
元暗殺者スキルの無駄遣いでしょ、これw
〈五月雨〉
【プロローグ】に繋がる、廃部寸前の部活動から依頼されるという王道展開。
ベタだからこそ、初見の読者様にもしっかりと伝わるよう、キャラクターの動機は強めに表現しています。
〈莉緒〉
確かに美優が押し切られた感じで依頼を引き受けたわね。
〈五月雨〉
この章の見所はその美優が独断でクラスメイトからの依頼を引き受けるシーンです。
自分で考えて判断した美優の成長を示す一つのポイントであると同時に、演劇を通して彼女が青春の思い出を得るという物語がスタートしました。
【幕間1】
〈莉緒〉
台詞だけで進む珍しい回ね。
〈五月雨〉
主人公とヒロインが二人きりの状況だったので、試験的に台詞だけで物語を進めてみました。
アクションなど目立った動きもなく、他のキャラクターが居ない二人だけの空間という限定的なものに限られますが、結構良い感じに収まったみたいで良い経験になりましたね。
〈莉緒〉
そして部外者であるクロガネが演劇に巻き込まれる理由とか予測可能な展開じゃないの。「一般客の飛び入り参加」とか割と都合の良い伏線も張ってあったし。
〈五月雨〉
我ながら安直でしたね。クロガネが介入する理由というか、物語の導入と展開は本当に難しいです。
【第2章】探偵と剣鬼
〈莉緒〉
青春学園ものかと思いきや、いきなりハードなアクションって……作者は「ガチを挟まないと死んじゃう病」でも発症しているの?
〈五月雨〉
『1』の終盤以来となる〈ブラボーゼロ/ブレイド〉こと新倉永八の登場シーンはインパクトがあるものにしたかったんです。それにこの時の新倉はゼロナンバーの仕事中ですし。
それと会社員に扮しての暗殺は、「残業手当」→「斬業手当」というダジャレを言わせたくて入れたシーンでもあります。
〈莉緒〉
それで殺された標的たちが哀れ過ぎるw
〈五月雨〉
まぁ冗談はともかく、このゼロナンバーとしての仕事が後々クロガネ達に更なるトラブルの種となる伏線です。新倉が登場した時点で、『3』が平和に終わるわけがないのですw
〈莉緒〉
一方、美優が土下座までしてクロガネを説得。頼み事の最終手段を会得する辺り、すくすくと強かに成長しているわね。親としてはちょっと心配……。
〈五月雨〉
そしてクロガネと戦えるならば演劇だろうが馳せ参じる剣鬼。
そりゃあクロガネも嫌がりますわw
〈莉緒〉
美優が某スクールアイドルのアニメ(※6)に例えて舞台の説明をするシーン。
※6『ラブライブ!』
学校統廃合寸前の母校を救うため、九人の女子生徒たちがスクールアイドルとして活動し、学校の知名度を上げて入学希望者を増やそうと奔走する青春もの。
〈五月雨〉
実際に『3』を執筆するにあたり、私もアニメを観てみました。演劇の舞台となる講堂などは、そのアニメを参考にしています。流石に『機巧探偵』は近未来の世界観なので、機材などはアレンジしていますが。
〈莉緒〉
それでアニメを観た感想は?
〈五月雨〉
リアルでの仕事が忙しく、大した時間も取れなかったため、ファーストライブ辺りまでしか観ていませんが、感想としては「一生懸命に頑張る女の子は素晴らしい」の一言に尽きますね。
お陰でモチベーションが上がり、以降の美優と文化研究部の行動は個人的に納得がいく良いものに仕上がりました。
〈莉緒〉
へぇ、参考資料って大事なのね。
〈五月雨〉
本当にそうですね。
【幕間2】
〈莉緒〉
新倉に続いて〈シエラゼロ/スナイパー〉ことナディアの登場ね。
美優、真奈に続く第三のヒロインでもあるわ。
〈五月雨〉
褐色肌のロリでスナイパーで片言でヤンデレという属性てんこ盛りなヒロインですね。誰だ、こんなにネタが多すぎて表現や描写に困るようなキャラ作ったの? 深刻な素材過多ではないですかっ。
〈莉緒〉
貴方だよ。
〈五月雨〉
……コホン。ナディアに関しては設定の情報量が多いので、キャラクターの紹介コーナーで解説させて頂きます。ここでは割愛しますので何卒ご了承ください。
〈莉緒〉
そんなに多いの?
〈五月雨〉
基本的にレギュラーでネームドキャラは設定が多過ぎて、ストーリーの解説に組み込めない。
〈莉緒〉
マジか……。
【第3章】配役と提案
〈五月雨〉
学園に足を踏み入れたクロガネと新倉。やはり部外者だけに浮いてますね。
基本的に二人は「外部講師」扱いで学園の敷地内に入ることを許可されています。
生徒側の要請を受け入れたボランティアの
〈莉緒〉
新倉はともかく、クロガネは大丈夫なの? 生計的な意味で。
〈五月雨〉
クロガネが演劇の練習に参加するのは放課後以降ですので、それまでの間は普通に仕事していますよ。本編では描写されていませんでしたが。
それにネット回線に繋がってさえいれば、美優は授業中でもクロガネのサポートは出来ますし。
〈莉緒〉
スゴイな、私の娘は。
〈五月雨〉
その娘がモテモテ、悪い虫が付かないか気が気でない保護者。久しぶりに会った新倉ですらクロガネの過保護っぷりに呆れています。
……おかしい、新倉はメンタルバーサーカーの筈なのに割とまともだ。
〈莉緒〉
剣の達人にして求道者の新倉永八。
……新選組ファンなら名前の由来は察しただろうけど、彼の設定もナディアと同じように?
〈五月雨〉
はい、別コーナーで解説します。ご了承ください。
【幕間3】
〈五月雨〉
急遽行われたオーディションという名の『クロガネVS新倉』一戦目……その後のお話です。
〈莉緒〉
珍しくサブキャラのみのやり取りね。
〈五月雨〉
学園祭の運営に深く関わっているので裏ではこういった場面もあるのでしょう……というのは建前です。
本格的な『クロガネVS新倉』のアクションシーンは伏せておきたかったというのが本音ですね。
〈莉緒〉
というと?
〈五月雨〉
このオーディション以降、クロガネと新倉は練習で何度も戦うことになりますが、今作最大の見所である本番の戦闘まで、出来るだけ二人のアクションシーンの描写は控え目かつ小出しにして温存しています。
〈莉緒〉
話題の映画が公開されるまでの予告CMみたいなものね。焦らしよる。
〈五月雨〉
そして何気に生徒会長が良い味を出しています。
個人的に生徒会長というキャラクターは、「多彩で知的で万能」という謎の偏見があります。解ってくれる方は結構居るのではないでしょうか?
〈莉緒〉
それもまた作者の勝手な偏見でしょうに。
【第4章】辻斬りと青春
〈五月雨〉
皆勤賞で出演している中年刑事の清水です。このアラフォー刑事、日曜の早朝から訪ねて来るとか良い度胸しています。私がクロガネの立場だったら、容赦なく居留守を決め込むと断言しましょう。
〈莉緒〉
気持ちは解るけどねw
さて、『1』以来の再登場のガラケー。実際に製造終了となった今でも会社では仕事用として現役な所は多いわよね。この世界観では既に化石みたいな扱いだけどw
〈五月雨〉
今後も意外と出番があるやもしれません。
ハッキングやウィルスに強いというのは中々侮れませんし。
〈莉緒〉
美優が観ていた魔法少女アニメは、果たして日曜朝のゴールデンタイムで流して良いものなの?
〈五月雨〉
美優の言動に悪影響が見られるため、深夜時間帯に左遷すべきですね。
そしてさらりと探偵事務所に下宿している新倉。
こいつも大概順応力が半端ないですw
〈莉緒〉
清水刑事、危機一髪。本人が知らないところで命拾いとか、結構怖い話よね。
〈五月雨〉
新倉が特撮好きという衝撃の事実。でも内容にこだわりが。
良い子の皆はテレビの視聴を邪魔されたからといって、決して刃物を投げたりしないように。
〈莉緒〉
第二ヒロインの真奈が登場。
でもクロガネと二人きりなのに、あまりアタックしないわね。
〈五月雨〉
普段は傍若無人な振る舞いを割とするくせに、恋愛には奥手なようです。
そしてクロガネがまともな教育を受けていなかったという衝撃的な事実。
〈莉緒〉
そんな大事な話を美優ではなく真奈に明かしている時点で、何かこう……彼女に対する信頼感があるわね……。
〈五月雨〉
前にも語りましたが、真奈は三人のヒロインの中で唯一、普通の一般人ですからね。そんな彼女だからこそ話せることもあるのでしょう、多分。
〈莉緒〉
うーん、本人は常時クロガネの傍に居る美優に嫉妬しているけど、実際の所これは大きなアドバンテージよね? 本人が自覚していないだけで。
〈五月雨〉
そうなりますねw
【幕間4】
〈莉緒〉
美優が初めて友達と遊ぶ回……うぅ、本当に良かったなぁ(感涙)。
私は同年代の友達を作ることすら叶わなかったから、娘が仲良く友達と遊んでいるのを見れて感動だよ。
〈五月雨〉
(重いなぁ……)
え、えー、百均の隣が手芸店ですが、流石に布地を直接卸したりはしませんよ。作中に登場する店舗はどれもオリジナルです。
購入した材料の中にマジックテープがありますが、演劇本番で活躍する予定です。
〈莉緒〉
伊達じゃないガンダムのカラーリングはシンプルながらいつ見ても完璧だと思う今日この頃。
〈五月雨〉
解る。
美優、初めてのカラオケ。
とはいえ、これまでに描写されていないだけで、クロガネや真奈と一緒にカラオケくらいは行った事があるかもしれませんね。
〈莉緒〉
『1』では怜雄のせいで叶わなかったけど、他にもボウリングとかする予定だったものね。
〈五月雨〉
女子会といえば恋バナという偏見。
美優のツッコミがキレッキレ。だんだんクロガネに似てきましたね。
〈莉緒〉
それは喜んで良いのかな?
そして智子、お前は少し落ち着けw
〈五月雨〉
以上、賑やかで平和な回でした。
【第5章】採寸と秋雨
〈莉緒〉
どこかしっとりとする回ね。
〈五月雨〉
この回は、『涼宮ハルヒの憂鬱』(※7)の「サムデイ イン ザ レイン」という話を参考にしています。
※7『涼宮ハルヒの憂鬱』
原作者は谷川流。角川スニーカー文庫を代表する超人気ライトノベル。
宇宙人や未来人や超能力者と一緒に遊ぶことを夢見る天真爛漫なヒロインに周囲が振り回されるというお祭り騒ぎもの。
「サムデイ イン ザ レイン」は原作者が新規に書き下ろしたアニメ版のオリジナルストーリーである。
〈五月雨〉
解る人には「何となくそんな感じがするなー」と思って頂けたら嬉しいですね。
静かに降る雨の音を聞きながら、思い思いに部室で過ごすあの場面。
まるで時間の流れが緩やかになったような感覚がたまらなく好きです。
遠くから聞こえる吹奏楽部の演奏の音や、運動部の掛け声、仲の良い友達とどうでもいい話をしながら廊下を歩いたりとか、そういった何気ない日常も確かに青春の一部だったかな、と考えながらこの回を書きました。
〈莉緒〉
そんな中で、美優が大胆な行動をしたかと思いきや不意に真面目になったり忙しいわね。本当にあの子はクロガネの前では様々な表情を見せてくれるわ。
〈五月雨〉
そのクロガネは珍しく戸惑うシーンがありますね。美優を守ることには一貫して不屈であるのに、自身に関しては無頓着だったツケが回ってきたような感じです。
〈莉緒〉
元暗殺者ゆえに、誰かを愛することも愛されたこともほぼ無いため、美優の好意を上手く受け止めることが出来ずに戸惑っている感じよね。
〈五月雨〉
暗殺者時代は『命令』を、探偵としての今は『依頼』を。クロガネの行動指針が今も昔もあまり変わらないため、美優を守ることに関しては彼女の母親である獅子堂莉緒の『依頼』で実行しているきらいがあります。
今回、美優の言葉によってその認識が揺らぎ、彼女をただの助手としてではなく、本当の意味で「相棒」と認めることが出来ました。
〈莉緒〉
ある意味クロガネも少しは成長できたという感じかしら? あるいは変化かな。
〈五月雨〉
見方を変えれば、少しは子離れ出来た保護者でもありますねw
〈莉緒〉
台無しだよww
【幕間5】
〈五月雨〉
「宙に浮かぶスケボーの実用化はいつなのだろう?」
何となくそんなことを思いながら書いた回ですね。
主人公たちが住む鋼和市は、本土よりも十年進んだ実験都市であるため、その設定を忘れないために、ここで一つSFというか最先端な物を出そう、ということで登場したのがフロートボードです。
〈莉緒〉
略してフロボー? ていうか、書くに至った経緯が割とひどいw
〈五月雨〉
清水がガラケーでクロガネと情報交換をしています。
わざわざ公園のベンチに座って話しているのは少し理由がありまして、警察署内やパトカーの中で話すと、AIが部外者に警察の情報を漏らしたと判断し、守秘義務違反として清水が拘束されてしまう可能性があったからです。
〈莉緒〉
鋼和市というより、作中の世界は〈サイバーマーメイド〉という最先端のAIによって管理されているわ。ある意味、『機巧探偵』の世界観はディストピアものよ。
〈五月雨〉
それに異を唱えてテロ活動を行っているのが、敵勢力である反サイバーマーメイド団体【パラベラム】や【黄昏】というわけです。
人間社会か? AI管理社会か?
現状、両者は対立していますが、果たして正しいのはどちらなのか?
ある意味で機巧探偵シリーズ全体にして最大のテーマですね。
〈莉緒〉
それはそうと、クロガネは清水にぼったくりを仕掛けるとw
〈五月雨〉
最終的に両者が納得する金額に落ち着いたので冗談だったみたいですねw
【第6章】衣装合わせと一人裏方
〈莉緒〉
クロガネと新倉のスピードに音響が付いていけないトラブルを、美優が解決するネタは初期の段階で考えていたのよね?
〈五月雨〉
その通りです。
実際に目にすると解りますが、武道の達人の動きというのは無駄が一切無いため、動作の兆候が読みにくく余計に速く感じるものです。
当然ながら、素人の学生の目には捉えられません。クロガネと新倉の持つ技術が高レベルであることを表すシーンでもあります。
〈莉緒〉
人魚姫にはハープが似合うという偏見。
〈五月雨〉
まぁ、その通りですw
電脳世界での美優の情報体やサイバー的な演出は必ずどこかで入れたいと考えていました。美優だけが持つ最大の特徴ですからね。
〈莉緒〉
落ち込む絵里香を励ます美優。
クロガネが言う通り、口が上手くなっているわねw
〈五月雨〉
人間化に向けてまた一つ成長していますね。
動画の編集をしたことはありませんが、非常に手間が掛かることだけは知っています。小説も中々手間が掛かりますしね。
でも徐々に形を成していく過程はとても楽しく、完成した時の達成感は作った者にしか得られない感動があります。
〈莉緒〉
欲を言えば、もっと筆が早くなれれば良いのにね。
〈五月雨〉
本当にそれは常々思ってますよw
【幕間6】
〈五月雨〉
新倉が今回の演劇を割と楽しんでいた最中、本番前日というタイミングで何やら不穏な展開になってきました。
〈莉緒〉
嵐の前の静けさ、いよいよハードなアクションに入るわけね。
〈五月雨〉
何を今更w 平和な青春もので終わらせる気などありませんっ。
〈莉緒〉
知っていたけどなぁww
【第7章】ABS再び
〈五月雨〉
演劇の成功のためにも、新倉の加勢に向かうクロガネ。『1』で示唆されていたとはいえ、何気に出嶋(獅子堂)からの依頼を受けるシーンの描写は初めてです。
〈莉緒〉
お前なら・きっとやれると・信じてる
語呂が良いこの五七五は、実は『機巧探偵』を手掛ける前から作者が考えていたネタだとか。
〈五月雨〉
いつか自分が作ったキャラクターに言わせたいと思ってはや数年、ようやく夢が叶いましたw
〈莉緒〉
縛りプレイで苛立つ新倉とナディア。
〈五月雨〉
「ここでまた縛り要素を追加するなら切るぞ」
『――通信を?』
「お前だ」
……の掛け合いは、個人的にかなりお気に入りw
〈莉緒〉
参戦したクロガネのガチ戦闘。
〈五月雨〉
前作『2』では銃を使わなかった反動か、ここぞとばかりに思う存分ぶっ放す描写を入れました。
〈莉緒〉
好きだねぇ。
〈五月雨〉
なお、クロガネ達が使用する銃器や戦闘スタイル等も後々紹介します。
〈莉緒〉
それも多いの?
〈五月雨〉
内容がマニアック過ぎてストーリー解説に入れられない。
〈莉緒〉
あっ、そっち?
【幕間7】
〈五月雨〉
美優が大人しくお留守番……かと思いきや、クロガネのサポートもしっかり行っている辺り流石メインヒロインにして探偵助手、優秀ですね。
〈莉緒〉
一方で『着替え中に遭遇ハプニング』に憧れるとか、だいぶ拗らせてるわね。
この子の将来が少し心配になってきた……。
〈五月雨〉
まぁまぁw
その辺のギャップも彼女の魅力の一つでもあるので、面白いと思ってくれたら嬉しいですね。では次。
【第8章】バッタと戦車
〈五月雨〉
今作で一番作者が楽しんで書いた回でもあります。
仮面ライダーもどきは出るわ、ガンタンクもどきは出るわ、FFⅦにジョジョとネタのオンパレードですね。
〈莉緒〉
まるで徹夜明けのテンションで書いたようなノリね。
〈五月雨〉
実際にそうでしたがw
必死かつ真剣に戦っているのに、どこかコミカル……そんな感じで仕上がりました。
〈莉緒〉
ナディアが毒舌。ヤンデレな上に気性が激しいとか、思春期かな?
そして別次元の狙撃技術が凄まじいわね。まだ13歳でこれは末恐ろしいわ。
〈五月雨〉
ナディア→クロガネ→新倉のコンボはかなり気に入ってます。
作中でABSのチームプレイを披露したのが今回が初めてだったため、気合入れて書きました。
〈莉緒〉
相棒として美優のことを誰よりも信じるクロガネ。
〈五月雨〉
しっとりとした【第5章】のやり取りがここで活かされてますね。
〈莉緒〉
これには娘推しの私もニッコリだよ。
〈五月雨〉
そんな探偵コンビを見るナディアの胸に広がる暗雲……新倉の確信通り、修羅場になる予感がします。ていうか予言ですね、これ。
〈莉緒〉
そして出嶋、高価なウニモグを二台も持ってるとか金あんな。
〈五月雨〉
内一台は完全に廃車になってしまいましたがね。
黒幕ムーブのツケが回ってきた感じですw
【幕間8】
〈五月雨〉
案の定、クロガネと新倉は学園祭本番に遅刻します。
それを美優の機転でカバーする回です。
〈莉緒〉
ゆっくりと舞台に向かって歩き、アドリブで歌って時間を稼ぎます。
歌い終わってふと見ると、クロガネと新倉が息を切らして到着。何とか間に合いました。
〈五月雨〉
実はこのシーン、カプコンのアクションゲーム『デビルメイクライ4』(※8)のオープニングをオマージュしています。解る人には解るネタですねw
※8『デビルメイクライ4』
『バイオハザード』でお馴染みのカプコンが誇る人気シリーズの4作目。
人間と悪魔の血を引く主人公が剣と銃を振るい、並み居る悪魔どもをスタイリッシュに薙ぎ倒していくという爽快感溢れるアクションゲーム。
〈莉緒〉
美優が歌った『Fly Me to the Moon』は1954年にリリースされたジャズの名曲ね。1960年代のアメリカではアポロ計画の真っ只中にあり、この曲は月に人類が到達するためのテーマソングとしても扱われたことから大ヒットしたわ。実際にアポロ10号・11号に録音テープが積み込まれ、人類が月に持ち込んだ最初の曲となったそうな。
〈五月雨〉
以降も様々な歌手によってカバー、アレンジがされて幅広い世代に知られるようになり、日本では特に1995年のアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング曲でも使われたことで、その知名度は爆発的に広がりました。
『Fly Me to the Moon』自体はもっと以前から日本で聴かれていたのですが、エヴァの人気とその影響力は強いですねw
〈莉緒〉
その後もウィスキーのCMソングや、カプコンのアクションゲーム『ベヨネッタ』の挿入歌でも使われるなど、愛されてるわね。
〈五月雨〉
実は美優がここで歌うシーンは当初予定にはありませんでした。
クロガネと新倉も普通に演劇に間に合っています。
しかし、【幕間4】のカラオケで美優の歌が上手かったこと、本番前にガチの戦闘があっては絶対にクロガネと新倉は遅刻するだろうと考えた結果、美優に場を繋ぐための何かを演じて貰うことにし、かぐや姫の月繋がりで『Fly Me to the Moon』を独唱して貰うシーンを作りました。
〈莉緒〉
元々『Fly Me to the Moon』はラブソングだし、歌詞の和訳も『SF竹取物語』におけるかぐや姫(美優)が竹取の翁(クロガネ)に送る愛の告白とも取れる内容だったし、ベストな結果になったんじゃないかな?
【第9章】剣鬼と青春の学園祭
〈五月雨〉
今作最大の見せ場であり、作者が最も苦しんだ回でもあります。
というのも、要所要所で視点が頻繫に切り替わり、
・クロガネと新倉の本格的かつ具体的なアクション内容
・舞台袖で解説を入れる文化研究部
・音響サポートをする電脳世界の美優
・観客の反応などなど
登場人物の数は元より、描写しなければならないものがあまりにも多過ぎるのです。これで文化研究部側の元々の人数が多かったら、作者は割と本気で匙を投げていました。無事に完成してほっとしています。
〈莉緒〉
お疲れ様でした。
〈五月雨〉
クロガネと新倉の殺陣は様々な作品を鑑賞して参考にしました。
映画だと実写版『るろうに剣心』、
漫画だと『死がふたりを分かつまで』、
アニメだとハガレンこと『鋼の錬金術師』辺りを参考にしましたね。
ハガレンは主にキング・ブラッドレイ大総統の戦闘シーンを参考にしています。
〈莉緒〉
ハガレンで作者が一番好きなキャラだもんね、大総統。
〈五月雨〉
ラスボスよりもラスボスらしい貫禄と圧倒的な強さ、そしてあの信念を最期まで貫き通した在り方に心奪われました。あの生き様は私の理想です。
〈莉緒〉
カッコいいおっさんが出る作品は神作品。はっきり分かんだね。
〈五月雨〉
むしろ人生経験が豊富なおっさんだからこそカッコいいのです。
話が逸れましたが、『SF竹取物語』感動のフィナーレ。
このシーンを書き上げた作者も謎の感動を覚えました。
本当によく書けたな、自分……。
〈莉緒〉
……お疲れ様。
【幕間9】
〈五月雨〉
演劇を終えて獅子堂の屋敷に帰還した新倉を、ナディアが物騒なお出迎えをする回です。【幕間2】の伏線回収ですね、容赦なく射撃の的にされています。
〈莉緒〉
本番前日の最後の練習をした後、大規模な戦闘をこなして休む暇もなく翌日の演劇本番に参加したわけよね? 相当疲れている筈なのに、ほぼ無傷で切り抜けるってスゴイわね……。
〈五月雨〉
恐らくナディアもそこまで本気では無かったのでしょう。
〈莉緒〉
本当に?
〈五月雨〉
………………しかし当然の結果として、屋敷を破壊するという大問題をやらかした二人は揃って怒られて罰を受けます。
〈莉緒〉
新倉は悪くないじゃない……。
〈五月雨〉
撃たれる前にナディアを止めなかったのが悪い。
〈莉緒〉
無茶言うな。
〈五月雨〉
出嶋がちゃっかりご当主に新車を買って貰えて御満悦。こいつも大概強かですね。
〈莉緒〉
そして謹慎を命じられたナディアが向かった先は……オチが見えた。
〈五月雨〉
それもまた王道的な展開ですw
【エピローグ】
〈五月雨〉
予想通り、いや予定通り? クロガネ探偵事務所に第三ヒロインのナディアが居候として転がり込んできました。
〈莉緒〉
これでヒロイン三人が全員集合、修羅場になったよ☆ やったねっ。
〈五月雨〉
『3』のエピローグは修羅場の三文字で片付きますね、本当に。
いやもう本当にこれからどうしよう……(困惑)
〈莉緒〉
頑張れ作者。
〈五月雨〉
そりゃあ、頑張りますけどね。
それでは『3』最後の解説です。
今作は『演劇の成功』という日常的かつ青春的な要素と、『その裏で繰り広げられていた主人公たちの戦い』という従来のハードな要素を組み合わせた内容となっています。
前者を象徴するのが『文化研究部の面々』、後者を象徴するのが『ゼロナンバーの面々』という感じで、多くの新キャラ・ゲストキャラが登場しました。
そして両者を繋ぐ重要な役割を、ブラボーゼロこと新倉永八が担当しています。
サブタイトルの『剣鬼と青春の学園祭』の通りですね。
ただ、今作が『学園青春もの』をテーマにしたにも拘らず、学園祭側の描写が足りなくて作者はやや不完全燃焼気味です。
これは今後の展開として主人公に好意を寄せる第三にして最後のヒロインであるナディアを、機巧探偵の主役二人と早い段階で絡ませたからです。
オートマタとの派手な戦闘を繰り広げた後、演劇以外の学園祭の描写をだらだらと挟んでしまっては、「ナディアの再登場のタイミングを見失う」「全体的にテンポが悪くなる」と感じてしまったため、ナディアが探偵事務所に訪れる前にあった【美優と学園祭デート】と【真奈のご両親とご対面】というエピソードをばっさりカットしました。
エピローグに「真奈を下の名前で呼ぶようになったクロガネ」の描写がさりげなく入っているのはその名残です。
次回はそうした『3』の不完全燃焼な部分を補完する、シリーズ初の番外編にして短編集となっています。
〈莉緒〉
内容は、
【美優と学園祭デート】
【真奈のご両親とご対面】
【家出するナディア】
各ヒロインの視点から描いたラブコメ話三本に、クロガネ視点の話を一本加えたスペシャル回となっています。
〈五月雨〉
サ〇エさんみたいな次回予告ですね。
〈莉緒〉
実際にサザ〇さんを意識してた。
〈五月雨〉
ちなみに時系列順に並べると、
【美優編】が学園祭二日目。
【真奈編】が学園祭終了後からナディアが訪れるまでの間。
【ナディア編】が『3』エピローグ後から三日後となっています。
〈莉緒〉
クロガネにとっては怒涛の急展開だ……。
〈五月雨〉
次回はその怒涛の急展開を順番に解説しますということで、『3』の解説は以上となります。
〈莉緒〉
それではこの辺で。
お疲れさまでした。またね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます