皆崎綺譚と奇妙な友人たち 或いは異能を持ったロクでなし達の話

内藤悠月

第1話 反確率/ディスダイス

 私、皆崎綺譚には、未来予知が出来る能力を持つ友人がいる。

 予知、と言っても現在よりも過去の出来事に起因して発生する出来事を理解出来るという、なんというべきか若干まどろっこしい挙動をするモノだ。

 人なら誰でも行っている予測を限界まで精度を高めたモノだと言っていい。


 例を上げるならば、不慮の事故でテーブルからコップが落ちたとしよう。

 この不慮の事故を予知することは出来ない。

 だが、そのコップが床に落ちたとき、コップが割れるかどうかが正確に予知出来るのだ。


 それだけを見ればくだらない能力だと笑うだろう。

 事実、少し頭がいい人間なら無意識に誰でもやっていることだ。

 だがこの能力の真価はそこではない。


 この能力は能力者……つまり私の友人である米屋未来が得た情報に全く依存しないのだ。

 過去に起因するのなら何でもかんでも予知が出来る。


 つまり新商品が出て株価があがるなら、その新商品の企画が出た時点でその未来を予知する。

 大統領の暗殺が行われるなら、その計画が立案された時点でその未来を予知する。

 仮に戦争が起きるのなら、その原因まで含めて実行の準備が始まった時点でその未来を予知する。


 物事には因果があり、その因果を手繰って未来を読み解くこの能力【反確率ディスダイス】は、計画ありきで物事が動く人間社会にとって非常に強力な能力だと言えよう。


 そしてその強力な能力を持つ米屋未来が、その能力を使ってやることといえば……である。

 よりにもよって、その未来視でやることがネタバレなのだ。

 SNSで一番最悪のタイミングでネタバレをぶちかます。

 そのタイミングすら未来視で調整してくるので本当に最悪だ。


 一度アニメの制作に訴えられたことすらある。

 だが、制作委員会にそれがネタバレである証拠を提示出来ずに逆転勝訴したことまであるあたり本当に最悪だ。

 その時はネタバレの核心ではない部分を巧妙に加工することで法的にネタバレとして扱えないようにしていたのだ。

 それを逆手に取って、というか法を悪用して逆転勝訴をもぎ取ったのである。


 楽しみにしていたアニメの顛末……というか、衝撃のシーンを対面でネタバレされたときはぶん殴ってやろうかと思った。

 というかぶん殴った。

 殴られるところまで理解しておいてネタバレするようなやつなのだ。

 人間性がクソすぎる。


 なんで私はこんなヤツと付き合いがあるんだ?

 友人関係を見直すべきだろうか……。



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 能力者名:米屋 未来

 能力:計画が立案されるなどで起こることが確実になった未来を予知する【反確率ディスダイス

 主な用途;SNSなどで放送中のアニメを未来視してネタバレすること。

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 能力者名:皆崎 綺譚

 能力:人間に科せられた「人であるという枷」を解き放ち能力者に覚醒させる【反神命ディスオーダー

 主な用途:社会実験適当な人間に能力をばらまく

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