12話 田坂朋徳 ⑤

 ふーーーー

もの凄い緊張して、待ちあわせの30分も前に店に着いてしまった。

満席とかだと困るから、席の予約だけはしてある。

にしても、30分前から店に入るのも迷惑か……

店は、俺が決めた。

中野は、なんでもいいって言うし。

和食の割烹の店?

フレンチ?

イタリアン?

中華?

寿司屋?

ホテルのレストラン?

いやいや、ホテルとか、なんかいかがわしいだろ!

オシャレな個室の店とかも、なんか狙ってるみたいだよな。

いろいろ、ほんと いろいろ考えて、行き着いたのは普段よく行く居酒屋。

ほんと、しょっちゅう飲みに行ってる店。

魚料理が美味い店だ。

あっ!中野、魚キライとかじゃなきゃいいけど。

なんでもいいって言われたけど、せめて苦手な食べ物あるかって聞くべきだったな。

中野と飯食べるなんて、初めてで、なんか頭回らなかった。

外で15分くらい時間をつぶし、店に入った。

入り口が見える方の席に座って、入ってくる客を見ていた。

考えてみたら、中野と会うの7、8年ぶりだな。

変わってないかな。

待ち合わせの5分前くらいに中野が入ってきた。

相変わらず、痩せてるな。

髪、こんな短いのは中学以来初めて見たって感じだな。


「おっ、中野!こっち!」

俺は立ち上がって手招きした。

「あっ、ごめん。遅かった?」

「いや、俺も今 座ったとこだよ」

「そっか、よかった」

とりあえず生ビールを注文した。

 

「この辺で、飯食うって言ってもよくわかんなくて、こんな居酒屋にしちまったけど、いいか?」

「あーいいよ!いいよ!別に田坂と洒落た店で食事したかったわけじゃないからさ。あはは。

今日は、ありがと」

「中野と飯食うなんて初めてだな。

先に聞いとけば良かったんだけど、食えない物とかある?」

「ううん、何でも食べれる!雑食!」

と言って笑った。

「良かった」


何でも食べれるなら、あれもオススメだし、これも食べさせたいなって、店員さんに今日はアレある?これはある?って聞いて注文した。

そこへお通しと生ビールが運ばれてきた。

生中と生大。


「じゃ、とりあえず乾杯!」

「乾杯!お疲れさま」


「で、なんか相談かよ?悩み事でもあんの?」

一口飲んで聞いてみた。

例えば、ダンナが……とか。


「悩み事?ううん、そんなんじゃないよ。

ただ、昔話に付き合ってもらいたかっただけ」

「そっか、じゃ いいけど」


半分くらい一気に飲んで、テーブルに置いた。

「メールありがとな」

「ん?メールって?」

中野は、ビールを飲みながら俺の顔を見た。

「だから……好き、だったってやつ」 

なんか、めちゃくちゃ照れた。

「あ〜〜あ〜〜あ〜〜!!あはは!それか!!

そのメールね!

だいぶ遅ればせながらって感じだけどね。

メールでも書いたけど、直接もう1回言ってもいい?」

ニコッとした。


直接!!??

「あっ?いいよ!!

あー、そうじゃなくて、いいよって、そうゆう意味じゃなくて、

直接なんて言わなくていいから!!

そんな面と向かってなんて照れんじゃん!!」

すげー焦って早口で言った。


「じゃ、照れてるとこ見たいし」

にやっと笑って言った。

「おまえ、俺のこと ただ からかってるだけだろ!!」

「あはははは!正解!!」

そう言って、中野は中ジョッキを飲み干した。

「なんだよ!!マジ感じ悪〜な〜!!」

俺も笑いながら、一気に飲んだ。

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