3話 倉田柚希 ③

 数日間なんだか、モヤモヤしていた。

浮気する訳じゃないから、ただ昔好きだったんだって伝えるだけだからって、なんだか自分に言い訳をしては、それを否定してみたり……


 今夜は、とおるが夜勤だった。

旦那がいない間に浮気しようとしてるみたいで、心苦しい気もしたが、こんなモヤモヤした気持ちで、何日もいることの方が気持ち悪い。

田坂に告白すれば、すべてがスッキリするような気がしていた。

今日を逃したらチャンスは当分の間ない。

今夜、田坂に電話しよう!と決めた。


 いつもどおりに、子供たちを寝かせて、リビングのソファに座った。

もう何年も前に聞いた田坂の携帯番号。

まだ、変わってないかな。

そもそも、繋がらないかも……だな。


かけてみた。

呼び出し音が鳴っている。

でも、留守電になってしまった。

どうしよう……

メッセージを入れようか、そのまま切ろうか、迷って……


「中野です。また、電話します」

そう言って切った。


あーーーーーー!!!!ドキドキした!!!!

 

ムリムリムリ!!


こんなんじゃ、とても本人と喋れないよ!!

ってか、電話で話したことも1度もないし。

また、電話しますって言ったけど、どうしよう……

1時間くらいたったら、かけてみるか……

そんな風に考えていたら、折り返しってくらいのタイミングで電話が鳴った。


田坂からだった。


わーーーーーー!!


これ、出ない訳にもいかないよな。

深呼吸して、電話に出た。


「もしもし」

「もしもし」

電話の声だと、いつもより低い感じがした。

「あっ、田坂?」

「おーーどうした?珍しいな」

あっ、やっぱりいつもの声だ。

「うん。 携帯変わってないかなぁと思って」

「あ?それだけか?なんだよ、それ!急用かと思ったぞ」

「あ、急用ってゆうわけじゃないんだけどさ、

夢をみてね、田坂 元気かなって心配になっただけ」

「えっ?心配って?

俺、事故るとか死んじゃうってゆう夢?

なに?おまえ、そうゆうのあんの?

予知夢みたいなの」

「えっ?予知夢?あはははは!

ないないないない!そんなん全くないよ。

ただ、中学の夢をみて、田坂どうしてるかなって思っただけ」

「なんだよ!びっくりさせんなよ!あはははは」


それから、お互いに近況報告みたいな話をして、同級生の誰々が結婚したとか、離婚したとか、誰々の親が亡くなってお葬式に呼ばれたとか、そんな話を20分くらい話した。


「えいちゃんとは連絡とってる?」

「あ、いや、最近は全然だな。

離婚して、すぐに再婚しただろ。

あっ、それは知ってんだっけ?」

「うん、棚部から聞いたよ」

「あ〜近所だからな。で、再婚して、まぁ俺とはあんまり会いたくなさそうだな。

離婚した時、いろいろ言っちまったから」

「そうなんだ」

「噂じゃ、子供 保育園に入ったようなこと聞いたな」

「そっか。じゃ、今度はうまくいってるんだね」

「そうだと思うけどな〜」

「田坂、メールはあんまりしない?」

「メール?ラインとか?しないこともないけど、割と電話が多いかな」

「迷惑じゃなきゃ、アドレス教えてほしいんだけど」

「あぁ、いいよ。言うけど、いいか?」

「うん」


メモ帳にメモした。


「あとで、試しに送ってみるね」

「おぉ」

「田坂から、かけてもらって長話しちゃってごめんね」

「いや、いいさ、全然。久しぶりに話せて嬉しかったよ」

「ありがとうね。じゃ、また」

「おう。じゃーな」


世間話 しただけだったな。

告白 できなかった……

でも、いいや!

メルアド教えてもらえたから、メールで告白しよ!!

それでいいや!!


『さきほどは、どうも。メール届くかな?

あとで、改めてちょっと長いメール送らせてもらいます。  中野 』   送信


は〜〜〜〜!!!!

ちょっと、落ち着いてからメールしよ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る