爆弾魔

桐崎 春太郎

一弾目 面白くないので爆弾投げてみた!

 青白い月明かりと街灯の明かりのみが私を照らした。仕事帰りくたくたでまともに前を見ていなかったのが悪い。けれど余りにも残酷で_____面白い出会いだった。

「そこのお嬢さ〜んこれあげる!」

 そう言って、フードを深く被った高身長の男が私の手を優しく掴んで爆弾を持たせた。


 ______爆弾を??


「えぇ!!!???」

 我ながら大きな声が出てしまった。そばで狂気的に笑う男。その男は笑いながら私の両手に包まれてる爆弾を取ってくれた。

「近所メーワクですよ、お嬢さん。クククッしっかしいい声だったなァ……。」

 腹を抱えて笑う男。この人、変質者なのでは?私がじ〜っと男を睨んでると男は言った。

「俺は〜………ダイナマイト!お嬢さんは?」

「……田縁 晴香(たぶち はるか)…。」

「そうか!ハルカ!!!」

 何この子。調子狂う。声はまだ少し若々しく思える。あと、性格が子供っぽいからまだ若いと思った。となれば私はおばさんになる。

「もうお家に帰りなさい。何歳なの?」

「え、えぇ…そういうの聞くの?お嬢さん。」

 質問するとまさかのドン引き。本当に何なのこの子。てか、手に持っている爆弾は本物?

「そのうち言うよ。ハルカ、俺ハルカ気に入ったからこれあげるね。実は新作なんだ!」

 と言ってまた爆弾を私に渡すダイナマイト。悪気なくやってるの?笑い声が聞こえてくる。これは、悪気あってやってるは。暫く動けなくなってる私を笑うと落ち着いたのか深呼吸して私のスーツの袖を引っ張った。

「帰ろ。ハルカの家どっち?」

「あぁ、それなら……。」

 と家がある方を指差した。


 ????


「け、警察!?」

 家を聞かれてる事に気がついて焦った。やっぱり通報した方が良いかな? 

「俺、警察じゃないけど?」

 するとグイッと腕を引かれて耳元で囁かれた。

「警察なんかに言ったら痛い目見るよ?」

 鳥肌が立つ。足が震える。どうしよう、誰か助けて。怖いよぉ…。

「ハルカァ…。なんで怖がってるの?」

 なんでわからないの。普通に考えて怪しい酷いだし変質者だし私、殺されるのかもしれない。

 あぁ…でも仕事、もう疲れちゃったから死んでも良いかな。あんな職場にいる方が怖くて仕方ない。

 黒い空に浮く月は黒い雲に隠されて真っ暗になった。街灯の明かりもポツポツと消え始めた。

「帰ろっか。」

 私がそう言ってダイナマイトのパーカーの袖を引っ張るとダイナマイトは少し不審そうに私の顔を覗き込んだ。しかし覗き込まれたのは白い仮面に顔が描いてあるだけだった。

 きっとダイナマイトの目には虚ろな顔をした私がはっきりと映っただろう。



 帰宅中、ダイナマイトは少し焦っていた。

「本当にいいの?」

「俺、爆弾持っているよ?」

「ハルカ元気ないのなんで?」

「あんたがついてくるって言ったんでしょ。」

 私が冷たくそう言うと「うぅ…。」と言い返せなくなっていた。そしてもじもじしながら呟くように小さな声で言った。

「でも、俺いつ捕まるかわかんないよ?」

「あっ犯罪だって理解してたんだ。」

「酷っ!」

「酷くない。自業自得。」

 またも論破。言いかせなくて私の後を追うダイナマイト。犯罪の意識はしっかりあって少し安心した。ただのやばい奴ではなかった。

 静かになったダイナマイト。長いからダイナに言った。

「なんで爆弾なんて持ってるの?」

「…んむぅ?そりゃぁ面白くなかったから爆弾投げよーって思ってたから。」

 これは駄目だ。やっぱりただの狂気的殺人鬼だった。

「その爆弾どこで得たのよ。」

「んん?自作!」

「え…。」

「見てて。」

 ダイナはそう言って、手の中で爆弾を作り始めた。どんどん形を作り丸みを帯びてきている。そして「見たろ?!」と自信満々で聞いてきた。静かな街中で大声で笑うダイナを連れて家に帰った。家に帰っても暫く煩くてなんとかあやした。

 今夜の月は青白くて真ん丸だった。

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