三果衰態乃至附錄

  三果衰態乃至附錄




  三果衰態



 蘡薁ゑびづる


いま褐色かちいろめいて

葉蔭はかげひしめけどもとどかねば

いも甘いもしかと判ぜず

あふうちにも乾涸ひから皴寄しわよ



 海桐とべらの實


未だ裂けやらず

綠色みどりいろまつたき中に一顆いつくわのみ

鳥につつかれたか半ば

ねつちりと赤いさねさら



 南京櫨なんきんはぜの實


未だ紅葉もみたぬを

外皮そと黑黑くろぐろ朽ちつつかは

申訣程度まうしわけていどに枝に貼附はりつけど

白白しらじらさね舍利しやりさね舍利しやり




   ※※※※※※※※※※



  附錄



かういつた具合に

左見右見とみかうみしてをれば



 「ああさうだ

  何事をも

  ただ毀壞こぼれてゆくばかり」



   しかく

   頭の奧でつぶやく者がある



    びつくりして



   その無精髯ぶしやうひげなる顏貌つら

   よくよく眺めてみたら



   ああ何だか

   隨分ずいぶん



   僕に瓜二つ



    はつとして また



    つくづくいやになる



    そんなふうな按配あんばいの冬に

    鳥も到頭たうとう 渡り來ぬとは




           渡り來ぬとは













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