【番外編②】少年期ささたけ(中学生) 音楽編
小説と漫画ではファンタジーとギャグに囲まれ、ほんの少しラブコメにも食指が動き始めたころの少年ささたけは、音楽の傾向にも多少の変化が訪れる。
当時の中学生の間では『GLAY』と『ラルク』の二大ロックバンドが大流行し、私の友人たちも御多分に漏れず各勢力がしのぎを削り合っていた。そんな中、私は独りで『T.M.Revolution』にハマっていた。とにかくマイナー志向なのである。もっともそんな『TMR』も、すぐにタイアップやらなんやらで有名になってしまい、少し残念ではあったのだが。
その後はカラオケ等の必要に迫られた結果、音楽的メジャー街道を歩み始めたところ――中学生最後の師走に、怪物がとんでもないものを引っ提げて現れた。
Automatic/time will tell(宇多田ヒカル)
である。
耳慣れないR&Bサウンド。
心を掴む切ない歌詞。
良く響く豊かな歌声。
それらを私と同世代の人間が歌っているのだ。
恐ろしく衝撃的であった。
度々話題に出すが、私には姉が二人ほどいるので女性が同世代の男に比べて大人びていることは知っていた。どのくらい大人びているのかというと――小学生の私が読んでいた本はすでに述べたが、その傍らで中学生の姉は、幽遊白書のBL本(蔵馬×飛影)を読む程度には大人びていた。しかも二人で回し読みしていた。
それほど女性に理解の深い私でもなお、こんなに美しい世界を同い年くらいの女性が作り上げるとはとても信じられず――ショックのあまり初めて本屋でCDを購入した。
おりしもこの頃の私は、作文のコンクールで全国入賞して表彰されるなど、非常に調子に乗っていた時期だった。ただし、別のコンクールで同級生が私より上の総理大臣賞(たぶん最高ランクの賞)を受賞したため、実際にはあまり注目はされなかったのであるが。相手にはテレビの取材も来てたし。
そんな露悪癖を存分に発揮した自虐風自慢は、彼女の登場によって木っ端微塵にされた。そのとき初めて、私は世界の広さを思い知ったのだ。
ラブコメと宇多田ヒカル。
この二つの要素によって、ささたけの少年期は終わりを告げ――青年へと変貌するのであった。
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