第32話

 ポーラハム神殿。


 草木の生えていない荒野の真ん中に、ポツンと立っている寂しげな神殿である。


 そこに飛王エマが数十人の部下を伴って訪れていた。


「……ここもだいぶ変わったが、神殿だけは変わらないな」


 エマは懐かしむように呟いた。


 神殿にエマは向かって歩く。


 すると、見えない壁が出現し、侵入を拒まれた。


「……結界か」


 エマは神殿の結界を破壊するため、剣を振るった。


 ズガァアアン!! という凄まじい音が鳴り響き、結界にひびが入る。


 しかし、壊れるまでには至らず。

 結界は修復しもとに戻った。


 一度駄目だっただけで、諦めることはなく、もう一度エマは剣を振るおうとする。


 すると、野太い声が神殿から聞こえてきた。


「やはり来たか。エマよ。残念ながら今のお前を神殿に入れるわけにはいかん」


 ポーラハム神殿の中から、土で出来た生物が出てくる。

 神殿を守る土の精霊である。


「……ドンダか。お前が私を入れようとするかしないかなど、関係はない。何があろうと私は神殿に入る」

「させぬよ」


 ドンダと呼ばれた土の精霊は、呪文を唱え始めた。


 すると、周囲の地面に無数の穴が出現、その中から黄土でできた人形が大量に出てきた。


 その人形は武装しており、エマや兵士たちを一斉に攻撃し始めた


 エマは目にも止まらぬスピードで動き、土人形たちを蹴散らしていく。


「私を止めようなどと無駄なことだ」

「今のは序の口だ。わしを見くびるでない」


 飛王エマと、土の精霊ドンダの争いが始まった





 早速ルルット城ではポーラハム神殿向かう準備を始めた。


 それほど大軍を今すぐ動かすことは不可能なので、精鋭を集めて出撃することに。


 あまり戦いの得意でないケルンは、作戦を考えてあとは家臣に任せるというスタイルであるのだが、彼女も珍しく出陣した。


 突如出陣することになり、家臣たちは戸惑っていたのだが、元々ケルンは内心は反飛王的な立場にいるので、これを機にジェードランと協力をして飛王を討つのかということで、それほど大きな反発はなかった。


 ルルット城から出陣し、それからバルスト城へと向かう


 なるべく早くポーラハム神殿に行かなければならないため、かなり急いで行軍し、予定日より五日早くバルスト城へと到着した。


 ジェードランは戻ってから、早速兵の準備をさせた。


「ジェードラン様……飛王を討つのですか?」

「それは状況次第だが……ポーラハム神殿を略奪していた場合、討つことになるだろう」

「可能ですか?」


 カフスは以前飛王と相対したときの、絶対的な力の差を鮮明に思い出し、勝つのは難しいだろうと思っていた。


「今回はルルット城の精鋭も来ている。負けるとは限らない。どの道、マナが行くというのなら行くしかあるまい」

「……そうですね」

「今回はお前も来い。城の運営は不安ではあるが、ほかの者に任せよう」

「かしこまりました」


 ルルット城の兵が味方したぐらいで、勝てる相手なのか大きな疑問があったが、それでも二人は覚悟を決めていた。


「ところでマナ様は、なぜポーラハム神殿に行きたがっているのでしょうか?」

「さあ、誰も尋ねていないし、本人の口からも聞いていないしな。まあ、理由などどうでもよい。行きたいというのなら、連れていってやればいいのだ」


 心の底ではジェードランも理由は気になっていたが、自分から話してこないのなら、無理聞くこともないと思っていた。


 バルスト城でも、いきなり大軍を動かすことは出来ないので、ルルット城と同じく精鋭だけが出陣することになった。


 総勢千名ほどで、ポーラハム神殿を目指すことになった。



「ポーラハム神殿はここバルスト城から南東にある。十日ほど歩けば到着するじゃろう」


 ケルンが地図を見ながら、ポーラハム神殿のある場所を説明した。


 食料の準備は出来ているので、問題なくポーラハム神殿まで行軍することは可能である。


 兵の総指揮はジェードランが担当することになった。

 ケルンは自分がやると主張したが、マナがジェードランに任せたいというと、渋々従った。


「それでは、出陣する!」


 ジェードランの指揮で、ポーラハム神殿に向けて出陣した。



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