第22話 一番嬉しい朝

 朝だ。目を開ける前までのひと時が怖い。

 また…望まないものだったらどうしよう。

 私は朝がすっかり怖くてたまらなくなってしまう。


 すると誰かが頰を撫でた!

 えっ!?だ、誰?

 まさか…いつかのように王子だったり、まさかのアルフだったら!


「大丈夫だよ…アンネット。僕ですよ」

 とヨニーの声だ!!

 私は目を開けて側で綺麗な緑の瞳を見た。


「きちんと日数を記憶していました。今日だなって。あれからピッタリ一年後だよ。アンネット」

 と17歳のヨニーに生きて出会えた!!


「ああ!ヨニー!!ヨニー!!良かった!良かったわ!貴方がこちらに生きている!!」

 嬉しくなり抱きつくとやんわりと少しだけ止められた。


 ??

 え?拒まれたの?なんで?まさか他に好きな人ができたとか??


 内心ハラハラしたが。


「ああ、アンネットごめんね。不安になった?君を嫌いとかじゃないよ。もちろん愛してる。なんというか、卒業してから昨日判明して…モーテンソン侯爵様とお話して…君との結婚が決まった!」

 と言う!!

 えっ!!?結婚が!?ヨニーと!?


「何それ?嬉しいけど一体どういうことなの?よくお父様が許してくれたわ…」

 と訳がわからないまま聞くと…

 ヨニーは照れながらそして私のお腹に手をやり撫でた。


「ふふふ…どうにも…驚くだろうけど…アンネットに僕の子が宿ったんだ…」

 と言われて私は


「ええええっ!??」

 とヨニーと自分の腹をなん往復もして驚く!!

 ここここ、子供が!!私の中にヨニーの赤ちゃんがいるの??

 き、きゃーーー!!


「大丈夫?アンネットしっかりして!」

 とヨニーがベッドから落ちそうになる私を支えた。


「ヨニー…あれからどうなったか、いっぱいお話してくれるかしら?」

 と私はヨニーの話を聞くことにした。

 17歳のヨニーは優しそうに私を抱きしめつつ話した。


「あれから…アルフ様があの生徒と共に…停学をくらいまして…相当な逆恨みをされ、アンネットを暗殺しようとする輩が現れました。もちろんアルフ様の手の者で、僕はアンネットを守る為戦い、負傷しました」


「えっ!?負傷!?」

 とヨニーはシャツをめくりあげるとお腹の少し横に刺し傷が縫われて残っていた!!痛そう!!


「ヨニー…可哀想に!大丈夫なの?」


「当たり前ですよ。時間経ったし今ここで生きてるでしょう?その時にアンネットや侯爵様が心配して僕たちの仲が侯爵様にバレて…王子とは婚約解消されました。そして、アンネットと僕は晴れて婚約者とこのモーテンソン侯爵家の後継となることになりました」


「ま、まああ!そんな奇跡みたいな!!」


「ある意味アルフ様には感謝です。彼は悪事がバレて王宮の牢に入れられて完全に出世街道から外されました。今も僕たちを恨んでいることでしょうから近辺には気を付けて生活しています。子供ができたなんて知られたら大変ですね。アンネットも気を付けて」

 と優しく手を握られる。


「では王子とカルロッタ様はどうしたの?」


「それも、もちろん、16歳のアンネットが言っていたように夜会で引き合わせて今やカルロッタ様とアンネットは仲良しの友達です。たまに茶会もしておりますし、あの王子もカルロッタ様にデロデロに一目惚れなさり…在学中人前でも構わずベタベタでしたよ。


 僕らは忍んでおりましたけどね」


「あら…そうなの…」

 アロルド王子…人目とか気にしないというか多分見せたがり目立ちたがりなのね。


「因みに在学中にカルロッタ様がお子を授かりました。今、10ヶ月目で実はもうすぐ産まれるそうです」

 とヨニーが言い驚いた!!


「ええええ!?そうなの?カルロッタ様のお腹大きいのね?」


「ええ…明日辺り、僕らの婚約と赤ちゃんの報告に王宮に登城することになりましたからその時にお会いできるでしょう。カルロッタ様も王宮に卒業後から直ぐ住み始めたのです。…まぁ、3日前ですけどね。


 おかげで卒業パーティーではカルロッタ様お腹を大きくして顔を出されました。卒業式には恥ずかしくて出席出来なかったのです。無計画な王子のせいですね。僕は上手くやりましたけどね」

 とちょっとだけ黒い笑いをするヨニー。

 えっ!?私のこのタイミングバツグンの妊娠は計画通りなのかっ!!?凄い!私が戻る日にちを計算して過ごしていたし凄いヨニー!頭いいわ!

 私も首席だったけどヨニーほどの狡猾さが無い。


「うーん、生まれてくる子…天才になるかもしれないわ…」


「魔力暴走だけはさせないよう躾けましょう」

 とヨニーが言う。


 *

 それから一晩経って、ヨニーと王宮へ向かった。馬車の中でもまだお腹大きく無いのにめちゃくちゃ気遣われた。

 出発の前になんかお父様が大工さんなんかを呼びつけていて子供部屋の増設とか始める話をしていたの驚いた。

 しかもニコニコして


「これから王宮に行くのかい?気をつけるんだよ?アンネット。孫に何かあったら心配だ!!」


「お父様私の心配をしてよ」


「ああ、もちろん、頼んだよヨニー!」


「はい!侯爵様!」

 とヨニーとお父様が仲良く握手している。


 ようやく一番欲しかった世界が手に入ったのね。嬉しい…。

 馬車の中私は今までの巻き戻りを思い出し涙した。辛いことも多かったけどやはり側にヨニーがいてくれた時が一番嬉しかった。


「アンネット?大丈夫ですか?気分が悪い?」


「いいえ、ヨニー、幸せなの。だからよ…」

 と肩にもたれかかる。ヨニーは頭を撫で髪にキスする。


 *


 王宮についてカルロッタ様の部屋を訪れたら本当にお腹が大きくて今にも産まれそうだ!!


「まあ!!カルロッタ様大丈夫ですか?」


「??大丈夫よ。もう直ぐ産まれるだろうけど後5日後って言われてるのよ」

 とカルロッタ様が言う。そこへアロルド王子がへにゃへにゃした顔でやってきた!!

 何こいつキモ!!

 昔の私よくこんなののこと想ってたな!!


「カルロッター!それに私の子よー!元気かなー?」

 とカルロッタ様のお腹に顔をあて話しかけているとボコっと赤ちゃんが動いたのが判ったのか、


「今動いたぞ!」


「それはパンチされたのかもしれませんわね」

 と言うとアロルド王子は


「え?何?お前たちいたのか」

 と今気付いたようになる。


「まぁ、失礼ですわよ!アロルド様!アンネット様も…卒業パーティーではみっともなく私目立ってしまってごめんなさいね」


「いいえ、カルロッタ様…。実は私もつい昨日お子ができましたの」

 と言ったのでカルロッタ様は大変喜び私とヨニーを歓迎してくれた!!


「おめでとう!!二人とも!!本当に良かった!!……アロルド様ももっと計画的になさってくれたら私恥をかかなくて良かったのに…」

 とカルロッタ様は文句を言っていた。


「美しいカルロッタを前に我慢などできようものか!!」


「とか言って人前でも恥ずかしいことばかりしてきましたよね!私学生時代皆さんの顔を見ることもできませんでしたわ!!」


「ふふ、カルロッタは俺だけ見ればいいのさ!」

 とキザったらしく言うのに白ける一同だったが…


「うぐ…!?あ、あれ?」

 とカルロッタ様が変な声を出しておろおろした。


「あ、あの…もしかして産まれたそうかも??」


「えっ!??」

 皆固まりかけいち早くヨニーが動き医者を呼びに行く。私もメイドを呼びつけたりした。

 王子はボーっとして


「カルロッタしっかりしろ!!」

 と言うのでカルロッタ様がキレて


「うるさいっ!静かにして!!うううっ、不味い!は…すい」

 と水が出てきたのか私は王子を突き飛ばしてともかくやってきたメイドとベッドにカルロッタ様を寝かせて王子は追い出して産婆を中へ通した!!メイドたちや助手や女手に囲まれてカルロッタ様が滝のような汗で真っ赤になり頑張っている。


「うあああ!いやああ」


「カルロッタ!どうした!大丈夫なのか!?」

 外から大声で王子が叫ぶので


「うるさいいいいい!!!」

 とカルロッタ様が王子にうるさいと言い王子は黙ったようだ。


 そして頭が出てきて可愛らしい赤ちゃんが誕生した!女の子だ。


「カルロッタ様!!やりましたわね!!」


「…はー、はい…うう、痛かった…死ぬかと…」

 とぐったりしながら言った。助手が赤ちゃんを洗って顔を見せるとカルロッタ様は涙ぐんで私も感動で泣いた。

 その後で入室を許された王子がビクビク入ってきた。ヨニーもついでに来た。


 王子が我が子を見て


「うお!!!無いっ!あっ!女の子か!」

 と言う。ボケとんかこいつは!


「じゃあ、ドロシーだな!」

 一応名前を考えていたみたいね。


「おめでとうございます!ドロシー様」

 泣き喚く赤ちゃんに私とヨニーも手を繋ぎ喜んだのだった。

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