イートリア国の王子様
雪之
0日目 選出の儀
王都の中心にある広場。
馬を引く者、荷車を引く者、商いの声を発する者や談笑する人々が入り乱れている。
その中心、一段高くなった場所に厳かに立つのはこの国の大臣の一人だった。
背後に立つ二人の騎士が鞘に収まった剣先を足元にガツリと当てると、大臣は両手を広げて演説を始める。
「この度、我が国の王子、大鷲の君が成人の儀を完了された。
これは我々国民にとって大変喜ばしいことである!」
重たいローブをはためかせながら高らかに叫ぶその姿に、辺りの者は思わず足を止める。
「大鷲の君はこの儀を経て、花嫁選出の儀を執り行うことと相成った!」
ざわりと沸き立つ観衆。年配の者は感慨深げに声を上げ、若い女性は黄色い悲鳴を上げた。
「此度の花嫁選出の儀、その題目は……」
固唾を飲んで待つ観衆。溜めに溜めたその間に、声を上げる者は誰も居ない。
「……美食の国、イートリア国の次期王妃に相応しい、料理の腕を持つものとする!!」
背後に立つ騎士がばさりと掲げた垂れ幕にも、同じ文章が大きく書かれていた。
「参加資格は十六歳以上の女性、身分に制限はない!
その他詳細は明日の朝、この場に掲示する!
開催は明日の午後より五日間、参加希望者は各々腕を奮うように、以上!!」
その声を皮切りに、観衆は一斉に四方に走り出した。
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