学生の恋

@pongatyou

第1話

何年経ってもあの頃の自分を思い出す。

いつまで経っても忘れられない心に刻まれた恋愛。人は昔の出来事を美化して生きていかなくてはならない。どんなに辛い出来事あっても意味のある経験だったのだと思い込むことで、次のステップへ進もうとする。

学生の頃の恋なんて、とても狭い範囲での出来事である。だけれども、その狭い範囲で の中で気持ちが揺らぐ出来事が起こると、自分の中の芯はグラつき、前に進めなくなる。

「浮気」をされたと気づいたのは、彼女が浮気をしてから二ヶ月以上が経ってからだった。会話、目線、肌の触れ合い。全てのコミュニケーションが付き合った当初に比べ減っていた。それでも同棲し、お互いを気遣い、上手く生活出来ていると思っていたのだが、そんな風に思っていたのは自分だけだったらしい。

身体も心も許した相手にそっぽを向かれてしまうのはとてつもなく辛い。それがほとんど初恋の人だったならば尚更だ。自分の世界が崩れてしまうような恐ろしい感覚。

学生の恋。儚く脆く自分勝手な恋。無垢な恋。あの頃恋に一生懸命だったのは彼女も同じだったのかもしれない。

学生を卒業し、父親となった今でも時折あの頃のことを思い出す。そして、生後半年が過ぎた娘に対して声をかけたくなる。

「一生懸命生きて、たくさん恋をしろよ」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学生の恋 @pongatyou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ