色々教えてもらった


 それからいくつか質問をして、いくつか情報を得ることが出来た。


 ウンディ―ネは基本的に単独で生活している。たまに番で行動することもあるが、それは子育ての時だけらしい。番、と言う段階でわかると思うがウンディーネには男の個体も居る。数は少ないらしいが。


 それとこの子の年齢は大体俺と同じくらいのようだ。ウンディーネの子育ては子供が10歳を超えたあたりで終わるらしく、この子も10歳くらいから一人で生活していたらしい。これについてはウンディーネの食性についても関わっているのだが、基本的にウンディーネの食事は人間とそんなに変わらない。


 しかし、別に食事が必須というわけでもないらしく、食べなくても周囲の魔力を取り込むことで生命を維持できるらしい。その所為なのか、親が子に食べ物の取り方とかを詳しく教えることは無いとの話だ。


 そして何故、俺を助けてくれたのかを聞いたところ、湖の中を泳いでいたらいきなり俺が目の前に落ちてきて驚いたのだけど、何か死にそうだったから助けないと、と思ったかららしい。

 深い理由が無かったのは驚いたが、この子が落ちた場所の直ぐ近くに居なかったら俺は確実に死んでいたのだから、理由がどうあれ命の恩人であることには変わりはない。


 最後に、ここがどこなのかについては、湖の中に複数ある水中洞窟の一つらしい。ということはここから出るには水中に潜らないといけないのでは? と聞いたところ何を当たり前なことを、みたいな表情で頷かれた。


 それじゃあ出られないじゃないかと落ち込んでいると、さすがにその時が来たら私が地上まで運ぶと言ってくれた。下げてから上げられた感じになったせいで過剰に反応してしまい、嬉しさからウンディーネに抱き着いてしまった。


 あ、ヤバイ。と思いウンディーネの顔を見ると、何か満更でもない表情をしていたので驚いたのだが、それと同時に体中に激痛が走った。


 ウンディーネは痛みから体を硬直させてしまった俺を優しく抱き返し、俺が目覚めた時と同じ体制になるように体を横にしてくれた。


 俺を寝床に寝かせた後、優しそうな表情で微笑んできたのを見てしまい、俺は恥ずかしさとその表情を見ることが出来た嬉しさから顔が熱くなってしまった。

 ああ、なんてことだ。これは確実に赤くなっているな、出来れば何か顔を隠せるようなものがあればよかったのだけど、さすがにそんなものが近くにあるわけがない。


 俺の知っている女は基本的に母さんとカイラのみだ。しかもカイラは俺のことを昔から道具みたいな感覚で接してきていたから、優しいとは一度も感じたことは無かったし、母さんも何時もとは言わないが時折カイラと似たような目で見て来ていたから、こうやって優しくしてもらえるとその優しさが心に沁みる。


 本当にこの子何なの? 完全に俺の好みど真ん中なのだけど。やばいな、これは家に帰りたくなくなる。ずっとこの子と暮らしていきたくなるな。さすがに無理なのはわかっているけどな。


 それに、碌にこの子のことを知らないからそう思うのは早計ではあるのだけど、少なくとも体の怪我が治るまではここから動けないし、それまではこの子を観察しつつ、この時間を満喫していこう。


 ああ、そうだ。このウンディーネの名前はスゥと言うらしい。

 これは正式な名前ではないらしいのだけど、それはまだ明かせないとの事。要は信頼が足りないのか、別の理由があるのか。とりあえず、ここを出て行くまでに、スゥが本当の名前を教えてくれるくらいには信頼してくれると良いのだけどな。

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