結局才能なのよね
「ごちそうさまー」
晩御飯を食べ終わり、シュネはレイ姉に聞いてみる。
「レイ姉は日記に書かれてた、錬金術のメモの部分って読めたの? なんちゃら2なんちゃら3を~、の部分」
「読めないけど、なんとなくわかる感じかしら? 例えばね……」
そういうとレイ姉は研究室に行き、鉄鉱石を持ってくる。
「鉄鉱石に魔力を通して分離するわね」
「姉さん、布敷いて」
ライア姉が食卓の上で錬金術をしようとするのを一度止めて布を渡した。
「ありがと~、それじゃあはじめるわね」
鉄鉱石に両手を
薄く発光しはじめると、少しずつ粉が出てきて蒸気が立ち昇る。
「はい、これが第一段階ね」
「何か変わったの?」
「これを近づけてみて」
渡されたのは手のひらサイズの鉄の塊だった。
それを近づけると鉄鉱石に強く引っ張られる。
「磁石になった!」
「じゃあ次ね」
先程と同じように魔力を流すと、同じように粉が出てきて蒸気が立ち昇る。
「近づけてみて」
「あれ? くっ付かない?」
シュネは何度も近づけては遠ざけるを繰り返すも、カチッカチッと音がするだけでくっ付かない。
「フフフ。次で鉄ができるわよ~」
三度目の魔力を流す。
「じゃ~ん。鉄ができました~」
レイ姉が出来上がった鉄に両手を広げてアピールする。
パチパチパチ。
隣でライア姉が拍手をしている。
「おお~」
パチパチパチ。
シュネもライア姉に釣られて拍手をした。
「たぶんだけど、日記に書いてあったのはこの物質の変化が掛かれているんじゃないのかな?」
「なるほど」
「錬金術は不純物を取り除いたり、不純物を別の物質と混ぜて、違う物質に変えたりもするのよ」
「はぇ~」
ただただ感服した。
日記で見た限りでは、錬金術は難度の高い魔法の分野だと思う。
それを簡単そうにやってのけるレイ姉はおじいちゃんよりすごいのではないのだろうか。
――あれ?
シュネは一つ疑問が浮かんだ。
「ライア姉、もしかして錬金術って刻印魔法より難しかったりする?」
「一概には言えないわね。才能もあるのではないかしら?」
「才能……」
それを言ったら身も蓋もない気が……。
「シュネからしたら錬金術も刻印魔法も同様の難しさでしょ?」
「うん」
「私からしたら錬金術も獣使いも同様の難しさなのよ」
「レイ姉も?」
「そうねぇ……私からしたら獣使いの方が難しいかしら」
「姉さん……」
ライア姉は自分の得意分野以外は同じくらい難しいと教えたかったのだろうが、レイ姉にはその意図が伝わらなかった。
「そもそも錬金術って物質が何で出来てるかを理解してそれを分離させるだけだから、刻印魔法より簡単よ~」
「そう……なの?」
シュネはよくわからなくなってきた。
おじいちゃんは刻印魔法のような繊細な魔力操作はできないけど、錬金術のような繊細な魔力操作ができる?
分離させるだけだから繊細さは必要ないのか?
物質を理解すれば誰でもできるのか?
いやそもそも――トントン。
シュネが考えを巡らせていると頭を叩かれた。
顔を上げるとライア姉だった。
「ね。才能でしょう」
「才能だね」
シュネはライア姉と顔を見合わせてクスクスと笑った。
才能……身も蓋もないと思ったその一言が、妙に納得いった。
おばあちゃんには刻印魔法の才能があった。
おじいちゃんには錬金術の才能があった。
それ以上でもそれ以下でもないのだろう。
「ありがと。レイ姉、ライア姉。じゃ日記の続き読んでくるね」
「どーいたしましてー」
シュネはカップにコーヒーを注いだ後、自室に戻っていった。
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