第11話「恋と模型と妖怪少女 ~お前らいい加減にしろ!ブチ切れ少女が釘バット片手に大暴れ~」

 プラモデルが接着剤使わないってタイプのガンプラばかり組んでるのだが、ガンプラ組んでもそんなに溶剤系の匂いしないってんで、割とみんな簡単にガンプラ組むけど、ガンプラの定めというものもある。 大体、プラモ屋自体がネット通販が全盛なのであんまり見かけないというものの、割引をよくやってる家電量販店は品ぞろえで言うとあんまり敵機と量産機が無いという具合で困ったなと思い、ふと閉店していたはずのプラモ屋が空いていたので、コロナ自粛がてらからのバックパックに一杯プラモを詰めていくつもりだった。

 「お客さん、本当にそんな量産機ややられメカばかりでいいのかい?」

 「いいじゃないですか、だって主役機だけだと映えませんから

 巨大な敵を撃ってこそのってところじゃないですか」

 「いいかい? いつまでも戦争ごっこばかりしていても視聴者に飽きられるんだ、だまって、こっちのを買うんだよ」

 プラモ屋のばあちゃんはそういうとマスターグレードとかパーフェクトグレードとかそんなんめじゃないくらいのサイズのとってのついたプラモの箱を出してきた、箱絵はなんだ、女の子か。

「これは釘バット少女カジィガワだよ」

「カジィガワ?」

「なんでも戦車を釘バットで粉砕するくらい強いモビルスーツで、たぶんエルダイバー」

「あーガンダムビルドダイバーズリライズだね、そんなキャラ出てきたっけ?」

「でてくるんだよ! これから! 黙って持って帰りな」

「はいはい」(組めるかな、こんなデカいの?)


 半ばタダ同然で渡されたのだが、箱絵が痛々しい持ち手付きの明らかにプラスチックよりも重いような気がするブツを手に入れてしまった僕だが、はやくもガンダムの敵対MSが一杯つまってるバックパックのほうが気になってるわけである。


(まあ最近のプラモは比較して説明書きが丁寧だから、大丈夫だろう)


 順序というものがある、まずは量産機と敵機を組んで、そして秘密兵器であるガンダムを組むという順序が、巨大な敵がいて、その敵を研究して作ったのがガンダムという流れで無いとなんとなくアニメにしても物語にしてもしまらない。


(で、カジィガワはどれにあたいするんだ?)


量産機? 敵機? 重MS? それとも味方機? 補助機体? ガンダム?

いやたぶんドールだろう、何にしてもモビルドールでパーフェクトグレードのスケールで出てるのは効いたことが無い、というか女の子型のモビルスーツのパーフェクトグレード以上のサイズってなんだろう?


 恐る恐る組み始める。


(あ、これ簡単、パーツ数スゴイ少ないというか、ディティール面考えてもよくもまあこんな少ない数のランナーでこのサイズのが組めるなあというか)


 気づいたら身長1m35センチの謎の少女が釘バットをもって立っていた。


「親の代からの恨みつらみの釘バット、よくも今日まで封印してくれたな!」


振りかざした釘バットは僕がわざわざ組んだスチロール樹脂製なのにとてつもなく重みを伴って僕の頭蓋をとらえて破壊した。


「はあ、はあ!? やったか!?」

「甘いね、大事なもののバックアップは取っておくほうなんだ」

「な、なんだと!?」


 そういうと頭部の無くなった僕を10分の1スケールのジムがコアドッキング、僕が着ぐるみジムを着込んだ形になるが、今までこの10分の1スケールのジム、頭部が小さかったからきれなかったんだよね、やったよ、頭部が吹っ飛んだから着れるようになった、これで怖いものは何もない、ヴィクトリー!


「くっ!? このプラモデルお化けめ! はっまさかここにあるすべてのプラモデルがお前の本体!?」

「ちっ気づかれたか、そうさこれは僕の分霊箱、僕が魂を削って組んできた仏様なのさ、さあジムに切られて死ぬがいい」

振りかぶったビームサーベルをたやすく釘バットが受ける。

「しまった!? あえて釘バットに血のディティールを工夫するための塗料を塗っていたが、その塗料が蛍光ピンクを混ぜていたから事実上のビームサーベルと化していたか!?」

「ばーかばーかあたまジム! とどめだくらえ釘バットインパクト!」

カジィガワの強力な鈍器がジムのプラスチック装甲をたやすく破壊して、パイロットだった十分の一のメイドールが飛び出してしまった。 これが僕そのものだ。


「愚かなメイドール、大量消費社会のために心血注いでプラモを組むその姿哀れなり、さあ引導を渡してあげるわ!」

「くっ!」

 そのときカジィガワはメイドールをラッピングしてyahooオークションに出品、精巧な動くプラモデルメイドールはたちまち高値で取引されて、資本主義物質消費社会のタグ付きとなり、大量生産されることとなった。


「そうよ、なにもかも値札が大事、値札が無いものは無銘の刀と一緒、刀の価値は持ち主が決めるのだわ」


カジィガワは大量の万札風呂で悠々自適の生活をおくることとなった。


かくして妖怪同士のバカ試合はフュージョンした謎の存在を残して結末を迎えてケツまくった。


 おしまい

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