第20話 ペンネーム、浸透していますか?

 へんてこなペンネームを付けると、どんなによい作品を書いても評価されづらくなります。


「わかりやすい」と「へんてこ」は異なります。


 私のペンネームは元々へんてこな「SSTM」で、そこから「SSTMIX」へ行って「SSTM」に戻し、「カイ.アルザードSSTM」になりました。

 しかし現在呼ばれるときはたいてい「カイさん」です。


 「SSTM」は本名のイニシャル「SS」に商標マークの「TM」を合わせて決めました。

 初めてメールアドレスを決めるとき、時間がなくて「とりあえずイニシャルにしておこう」と。でも最低字数4文字だったので「どうしよう」で「TM」マークでいいや、となりました。


 で「SSTM」は「システム(SYSTEM)」の子音だなとひらめいて「SYSTEM 9」で「SSTMIX」に。

 そこに構想中の小説の登場人物「カイ・アルザード」から取り入れています。

 でも中点は直接かぶるので「ピリオド」にしました。


 ここまで工夫した挙げ句の「カイさん」です。


 これならペンネームも「海産総選挙」じゃなくて「カイ」だけでよいかもしれません。


 ペンネームが長いと、読み手が憶えきれない、という弱点もあります。

 とくに意味のない文字の羅列は憶えられません。

 「SSTM」なんて誰も憶えませんよ。


 昔、某チャットに毎日入り浸っていたときは「SSTM」で参加していても皆から「艦長」と呼ばれていました。

 これも憶えられない文字の羅列では親しみが湧かないことを示しています。



 で「カクヨムコン」に備えてペンネームを変えようかと思っています。


 より憶えやすいものに。


 どんなに読みやすい小説を書いても、ペンネームが複雑怪奇では意味がない。


 「名は体を表す」です。


 読みやすさを追求した作品を書いている人が読みづらいペンネームではいけません。


 逆に難解な「ミステリー」を書いていて、名前がひらがなだけ。

 これもなかなか成功しません。

 緻密なミステリーを書いていてペンネームが「のらねこ」だったら。

 とても重厚なミステリーとは思えませんよね。


 VRMMORPGものの始祖のひとつでいる『ソードアート・オンライン』の川原礫氏も漢字だからシリアスな描写も映えます。

 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の渡航氏は、わかりやすい重ね言葉なので「ラブコメ」の雰囲気をじゅうぶんに伝えきれています。



 ペンネームは自分が書くジャンルや作風によって似合っていて憶えやすいか、合わずに憶えていられないかが決まります。




 ペンネームは次の五点を満たすようにしてください。


「読みやすい」

「書きやすい」

「長すぎず短すぎない」

「憶えやすい」

「かぶらない」


 一流の書き手のペンネームに難しい漢字はまず使われていません。

 誰にでも読めて、誰にでも書けて、適度な長さで、記憶に残る。

 だけど他の誰ともかぶらないから、すぐに誰かが特定できる。



 あなたがプロになって「紙の書籍」を出版した際、あなたのファンが書店に予約しに行くと仮定しましょう。


 ファンは書店員さんに書名と作者名を伝えなければなりません。


 このとき難解な漢字や難読漢字を用いていたら、うまく伝えられないのです。

 また長すぎたら伝えるのもたいへんですし、短すぎたら予約システムで特定しづらい。

 手間がかかって「もういいや」と思われたら、ひょっとすると予約を諦めてしまうかもしれません。


 書店は今までのところ、予約したぶんは確実に入荷しますが、予約がなければ取次が各書店への配分を決めて出荷します。

 書店は入荷する数量を決定できないのです。


 だから「読みやすい」「書きやすい」「長すぎず短すぎない」「憶えやすい」「かぶらない」は最低限だと思ってください。

 プロとしてやっていくには、ペンネームひとつすらあなたのセンスとプロデュース力が試されるのです。




 「かぶらない」について補足しておきます。


 ウェブ検索たとえばGoogle検索でペンネームを検索して、あなた以外の人がヒットするようなら「かぶっている」と考えてください。


 検索してあなたしかヒットしなければ「かぶらない」と判断できます。


 プロはペンネームがかぶりません。中には同姓同名もいますが、たいていは本名です。


 もしかぶってしまうと売上に響きます。


 たとえば「おはぎ」というペンネームにして検索してみたら、餅の「おはぎ」が先にヒットしてしまったら駄目なのです。


 わかりやすいけど一意性のあるペンネームを付けられるかどうか。



 ペンネームは頻繁に変えるべきではありません。


 読み手が憶えられないからです。


 ステータスを付け加えたとしても、ペンネーム部分にはいっさい手を付けないように。


 一作ごとにペンネームを変えてしまうと、記憶に残らないしネームバリューも活かせません。


「この作者って以前こんな小説を書いていたよな」


 そう思ってもらえたら、ファンはどんどん増えていきます。


 なんの共通性もないペンネームに変えてしまうと、それだけで新規にファンを開拓しなければならなくなります。

 今までの努力が水の泡。

 一からやり直しです。


 そんな非効率的なことはオススメできません。


 もしそのペンネームで過去に大失敗したことがあるのなら。


 そのときはペンネームを劇的に変えるべきです。

 でもそんな大失敗は人生で早々起こりません。


 だから一度掴んだファンを逃さないよう、ペンネームは一度決めたら変えないほうがよい。

 変えるとしても、ステータスや属性を加える程度にして、以前のペンネームで検索してもヒットするように気を配るべきです。


 「小説賞・新人賞」の選考さんも、きっと選考の前にウェブ検索をしているはずです。

 今までどんな文章を書いてきた人なのか。

 予備知識を得たいからです。


 「応募した原稿だけで評価してくれ」と思わないでもないのですが、出版社の利益につながり社運もかかっていますので、選考の段階で書き手をふるいにかけるのは当たり前。

 もしなんの実績もない書き手の応募作なら「初級者」として選考しますす。

 どこそこの「小説賞」で二次選考まで残った、という情報があれば、それも加味されると思ってください。


 だからよほどのことがないかぎりペンネームを変えてはなりません。


 とくに賞レースへ本格的に挑むのであれば、そこからのペンネームは固定するべきです。



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