第9話 試験の完了とお使い

「どうやらうまく......いや、随分と気に入られたようじゃないか」


 部屋から出てきた私とハーピーさんを見て苦笑いしながらヨーダさんが言う。私は背後からハーピーさんに抱きすくめられる格好になっていた。


 羽で包まれている感じなのでフカフカで暖かいけど歩きにくい。ちなみに身長的な順番では高い方からナイト、ハーピーさん、私だ。


「最初は厳かな感じだったので緊張したんですが......」

「その様子じゃ最後までもたずにボロを出したんだろう。......なにがアタシは厳しく審査してやりますよ。なんだかねぇ」


 ヨーダさんはジト目でハーピーさんを見る。


「だってマスター。じゃなかったヨーダ様。

この子......じゃなかったこのマスターはアタシが仲間になるのを喜んでくれたうえに、一緒に空まで飛んでみたいって言うんですよ!?」


 ハーピーさんは大興奮のようだけど、私は別に特別な事を言ったつもりはないのに......


(ヨーダは高い所が苦手でね。ハーピーと一緒に飛んだ事などほとんどないのさ。ハーピーはそれについては不満のようだったな)


 はこ丸が説明してくれる。

 なるほど。それで私が大歓迎されてまるでぬいぐるみの様に離してもらえない訳ね。確かにハーピーさんは不満があったのかジト目でヨーダさんを見返している。


「まぁいいさね。お前さんがハコワンを気に入ってくれたのならこの後の展開がはやいからね」

「ふふん、任せて下さいヨーダ様」

「え? この後......ですか?」


 まだ試験みたいなのは続くのかしら?


「おや、まだ試験は続くのかって顔をしているね?」


 ......どうやら顔に出てたみたい。


「試験ではないから安心おし。むしろそっちの結果は上々さ。頼みたいのはお使いみたいなものでね。ハコワンの助けになる手続きも兼ねているから是非やってもらいたいんだよ」

「何をすればいいんでしょうか?」


 難しい内容じゃなければいいけど......


「それはね......都にある冒険者ギルドでハコワンの冒険者登録をしてきてもらいたいのさ」

「冒険者......ですか? 私が?」

「名目上は、だね。召喚調教師の肩書きがあるから、今後ギルドが色々助けてくれるだろう。……まぁそのかわりギルドから仕事を依頼されたりもするかもしれない」


(国の暗部に関わる存在になる訳だからな。バックアップは当然ある。今のハコワンにとって大きな助力になるだろう)


 うーん? あまり深く考えなくてもいいの......かな? 深く考えるとよく分からなくなりそうだし。何も分からないなら助けがあった方がよさそうだしね。


「分かりました。けど、ヨーダさんは向こうからここまで三日かけて来たんですよね。私は何の準備も出来てないんですがどうすれば......」


 何も持ってない状態でいきなりはこ丸に詰め込まれた訳だから、準備不足は私のせいじゃないわよね。私がそう質問すると、途中でハーピーさんに羽で顔をわさわさと撫でられた。

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