二章 〜生命の遊戯〜

プロローグ

 とある廃墟の一室。山間にあるその廃墟は、心霊スポットとしてウェブサイトに掲載されている。


 そのサイトは掲示板のような作りになっており、実際に訪れた人が体験談を投稿できるようになっていた。


 立地は悪くない。歩いて坂を下ればすぐにコンビニがある。インターネット回線も電波を拾えば問題なく使用ができる。携帯電話の電波も届き、隠れ家にするには最適な場所だった。


 インターネット上に情報があるため、心霊ファンがときどき訪ねてくることがある。人々の目的が心霊であることから、夜に来ることが多い。


 そのため、昼にこの場所を隠れ家として使っていると、誰にも邪魔をされることはない。


 廃墟の一室は薄暗かった。まだ太陽が真上にあるのに、室内にその光はほとんど届かない。パソコンのスクリーンが放つ光だけが部屋を照らしていた。


 コンクリートで覆われた広い部屋のラックには様々な機器が並び、大きいデスクにはディスプレイが三つ横並びに配置されている。



 ひとりの男がそのディスプレイを見つめ、キーボードを叩く。


 たくさんのウィンドウが表示され、その中には一見不規則にアルファベットや数字、記号が羅列されていた。


 ディスプレイの光に照らされた男は無表情だ。



 「零、お前たちは楽しませてくれるのか」



 男の口元は自然と緩んだ。純粋に何かを楽しみにしている子供のような無邪気な笑顔であった。


 またゲームを楽しめるのかな?


 血は争えないとよく言うが、必ずしも天才の子供が天才というわけではない。それでも、期待せずにはいられなかった。


 あれは偶然の産物だった。いつも計算をして行動をしているが、まさかあのような結果になるとは思っていなかった。嬉しい誤算だ。


 あらゆる因縁と感情が混ざり合ったこれからのゲームは、きっと非常に楽しいものになるだろう。


 想像するだけで笑みが抑えられない。


 パソコンの操作を続けていると、スクリーンにメーターが表示された。緑色のバーが零パーセントから百に向かって伸びていく。


 何かの情報をダウンロードしているようだ。完了の表示が出ると、男はUSBメモリをポートから抜き取った。



 「さあ、革命のときが来た」



 男は椅子にかけていた上着を手に取ると、日常の街へと消えていった。


 光と闇は紙一重、天才と愚か者も然りだ。


 さあ、君はどちらだ。

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