第49話 ウリエルの最後

 天使ウリエルは驚愕の表情のまま、頬を押さえ、後ろに飛んだ。

 羽をはばたかせ、ウリエルは空中にのがれようとしていた。

「この感触、そうか貴様、メフィストか」

 天使は父さんを睨み、そう言った。


「天使たるものが逃げるのかよ」

 父さんはいつもののへらへらとした口調で言った。


「貴様らは絶対に殺す」

 ついさっきまでの余裕はどこへやらで天使ウリエルはその羽をはばたかせて、攻撃姿勢をとっていた。

 またあの鋭い羽の攻撃をしようというのだ。


「させるか!!」

 そう叫び、母さんが飛び出した。

 ちらりと僕に目配せする。


 それを見て、僕も両足を三日月で強化し、飛び出す。

 もとに戻っていた木刀を斬鉄剣に戻す。

 僕は母さんと並んだ。

 ちらりと視線が合う。

 僕は母さんに呼吸を合わせた。

 もちろん使うのは母さんの得意技だ。

 僕はさらに右腕を強化し、突き技を繰り出す。

 その技のスピードを音速近くまで加速させる。

 ぶちぶちと腕の血管や筋肉が切れていくが、そんなのはおかまいなしだ。

 腕にはしる激痛は月桂樹で和らげる。

 僕たちは三ツ星を天使ウリエルの頭めがけて撃ちだした。

 合計六発もの突き技を食らい、ウリエルの頭は見るもたえないものへと変化した。

 僕たちの攻撃力が天使ウリエルの耐性をうわまわったのだ。

 恐らく父さんがなにかしらの力で天使ウリエルの力を下げたのだろう。

 その証拠に父さんの瞳は紫にらんらんと輝いていた。

 だが、さすがは黙示録の四騎士といえた。

 なおも立ち上がろうとしていた。

 血と抜けた歯をぼとぼとと垂れ流していた。


「こんにゃろう!!」

 金属バッドを頭上に振り上げ、Qはそれを天使ウリエルの頭めがけて一気に振り下ろした。

 べちゃっと鈍く嫌な音がしてウリエルの頭は完全に破壊された。

 ウリエルの羽を生やした体は光を失い、何度か痙攣した後、完全に動かなくなった。


 僕はやつに近づく。

 やった黙示録の四騎士の一人を倒したぞ。


 だが、死んだと思った天使ウリエルの瞳が赤く光った。


 あの目の光をみたらダメ。ウリエルは最後の力をふりしぼって月彦を支配するつもりだわ。

 月読姫がそう警告するが、わずかにウリエルの精神攻撃のほうが速い。


 くそ、なにか気持ちの悪いものが僕の意識の中に侵入してくる。

 だめだ、あらがえない。

 どくどくと何か濁ったどす黒いものが僕の心の中に流し込まれる。


 月彦、月彦、月彦……。

 月読姫が僕の名前を呼ぶが、その声に答えることができない。



 気がつくと見たこともない景色が目の前に広がっていた。

 どうやらどこかの病院の一室のようだ。

 一人の若い男がベッドに横わたっていた。


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