目が覚めたらゾンビが徘徊する世界だったけど幼なじみがくれたギフトでのりきります。
白鷺雨月
第1話 それは別れのキス
よく晴れた初夏のその日、僕は幼馴染みの
彼女は僕と同い年の十七歳。
県下きっての秀才だったが、高校には進学せずに何故か引きこもってしまった。
陽美の家にいくと、彼女の母親があたたかく出迎えてくれた。
「月彦君、いつもありがとうね」
陽美のお母さんが嬉し気に僕を出迎えてくれた。
陽美が引きこもった当初は中学時代の友人たちがよく様子を見に来ていたが、それも一ヶ月ほどで終わってしまった。
高校に入学した皆はそれぞれの生活が忙しくなったのだろう、それは仕方がないことだ。
こうして月に一度ほどではあるが、彼女の家を訪れるのは僕だけとなり、それがライフワークのようなものになっていった。
それに陽美自身も僕の来訪をどこか楽しみにしているふしがあった。
いつも別れ際に聞かれる言葉がある。
今度はいつくるの?
である。
幾つものパソコンが並ぶ部屋に僕はいた。
その機械たちのせいでその部屋はかなりの狭さだった。
僕たちはその狭い部屋で肩をよせあいながら、テレビゲームに夢中になっていた。
彼女の部屋に来てすることといえば、ゲームをしたり、アニメを見たり、漫画を読んだりすることだけだった。
根っからのオタクである僕にとってそんな一時はなにものにも代えがたいものだった。
こんな時間が一生続けばいいのにと思う。
それに陽美はとびっきりに可愛いのだ。
ボブカットの茶髪は毛先が内側にふんわりとカールしている。
瞳は大きく、綺麗なアーモンド型をしている。
ピンクの唇は小さく、思わず見とれてしまう。
きっととんでもなく柔らかいのだろうな。
そこいらのアイドル顔負けの可愛らしさなのだ。
おまけにスタイルも抜群で今もよれよれのTシャツの襟元から柔らかそうな胸の谷間が見えていた。
「ねえ、月彦。キスってしたことある?」
激しくコントローラーのボタンを連打しながら、陽美は訊いた。
ダダダッとさらにボタンを連打しながら、陽美はモニターから目を離さない。
「ブヘッ!!」
思わず僕は変な声をあげてしまった。
ユアールーズ。
モニター画面から機械の音声が流れる。
突然、変なことを聞くから負けてしまった。
「月彦、弱い」
にひひと唇の端をあげ、陽美は笑った。
「陽美が変なこと言うからだろう」
むすっとしながら僕は言った。
「あれ、変なことかな。ちょっと聞いてみただけだよ。それで、月彦はしたことがあるの?」
「そ……そんなのないよ」
顔に血がめぐるのを覚えながら、僕は言った。
その言葉を聞いた後、陽美はコントローラーを床に投げ出し、顔をぐいっと近づけた。
間近で見る陽美の可愛らしさは反則級であった。
「じゃあ、やってみる」
その言葉を聞き、僕の体の体温が上昇していくのを感じた。
「い、いいの」
僕はきく。
「いいよ。でもその前に確認、月彦は私のこと好き?」
そのなの好きにきまってるじゃないか。
そうじゃなかったら、引きこもりの彼女の家にわざわざ足をはこばないよ。
こくりと僕はうなずいた。
「そんなんじゃ、駄目。ちゃんと言葉にしてくれなくちゃ」
じっと僕の目を見ながら、陽美は言う。
陽美がそういうので僕は意を決した。
「す、好きだよ」
あーついに言ってしまった。
「わーうれしい、私も月彦が大好きだよ」
そう言うと陽美は僕の首に手を回し、唇を重ねた。
え、やばいんですけど。
女の子の唇ってこんなに柔らかいの。
ゆっくりと陽美は舌で僕の唇をこじあげ、侵入させた。
その舌は甘く、この世のどんなものよりも柔らかく、気持ちのいいものだった。
これはまずい、舌を入れられただけでいっちゃいそうだ。
快感が脳内を駆け巡り、意識が遠退く。
陽美の舌はそれ単体が生きているかのように僕の口の中を這いずりまわり、唾液を流しこんでくる。
僕はその甘い唾液をごくりと飲み込んだ。
あれ、なにか小さな固いものを感じるぞ。
その小さい、固い何かが口の中に入ってくる。
違和感を覚えていると、陽美はそれをねじ込むように舌で押し込んだ。
ぐいぐいと舌で押し込まれるので、ついに僕はそれを飲み込んだ。
唇を離すと、糸をひく唾液を陽美は手の甲でぐいっとぬぐった。
あれ、おかしいぞ。
体がいうことをきかない。
どさりと僕は床に倒れた。
やばい、これはやばい。
まったく体がいうことをきかない。
「ごめんね、月彦。でもねこうしなくちゃいけないの。こうしないと、
陽美は耳元で囁き続ける。
「目が覚めたら、とんでもないことになっているわ。でもね、そうなっても月彦はきっと生き残れるわ。それが私からの
僕はどうにかして頷いた。
それが精一杯だった。
再び、陽美の唇が触れると僕は意識を失った。
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