掌編小説集
サトウヒロシ
毛虫
老人は道を歩んでいた。
片足が不自由だったので、
少し進むと、歩みを止めて、息を
道沿いに涼しげな
その繰り返しだった。
昼下がり、日がじりじりと老人を
いつしか老人の
老人の
老人と同じ方角に向かって
見守るともなく、老人は毛虫を見守り出した。
その歩みに合わせるように、毛虫は老人と並び、つかず離れずとなった。老人の歩みが少ししっかりしてきたようだった。
すると、後ろの方から幼い声が大きく響いた。
「お前、のろいなあ」
「お前こそ」
「よく言うよ」
「お前こそよく言うよ」
二人の小学生が
「あ、ズルイ、いま走ったろ。
「走ってなんかないよ~だ」
きゃらきゃらと笑いながら、子供たちはみるみる速度を上げた。ひと足踏むたびに
聞こえてか聞こえなくてか、老人は一心に
ふんっ、ふんっ、と歯を食いしばる
その視線はやはり毛虫を追っているようだった。
いまや並びながら早歩きしている子供たちは、勢いよく老人の背後に迫ると、示し合わせたかのように左右に分かれ、あっという間に老人を抜き去っていった。
が、抜き去る瞬間に鈍い音がした。
老人は最初は何が起こったのかわからなかった。老人は歩みを止め、一点を
それから、老人はしばし
「勝つのは俺様だ」
「俺様のほうさ」
遥か前方からは、子供たちの
※この作品は、小説家になろうにも投稿しました。
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