第5話 能あるメイドは空気を読む
「ひゃ、ひゃい。」
「はあ、よかった。」
レイはメイド服の女性の安全を確かめると胸をなでおろした。それから息を吐くとレイの白髪は夜の闇に溶け込むように真っ黒に、神秘的な輝きを放っていた碧眼は力を失うかのように黒く濁っていく。
レイの髪と目が完全に黒く変色すると彼の背後から、先ほどのレイと全く同じ色の髪と目を持つ幼女がひょこっと顔を出した。
「大丈夫?」
「あ、ああ、心配はいらない。」
なぜ自分がこの幼女にここまで目線を奪われるのか、メイド服の女性は彼女から感じる違和感を探す。少し、本当に少しの時間でそれは見つかった。レヴィはそれを見つけると同時に目を見開き驚きをあらわにする。
「まさかっ!あなたは精霊かっ!?」
「ん?そうだよー、私スフィア。レイと契約してるんだ!」
スフィアはそう言ってレイに抱き着く。レイもそんなスフィアに笑いかけて彼女の頭を撫でていた。メイド服の女性はそんな光景を前にただあっけにとられている。
「レイー、ここら辺に人はいなかったわ。」
「こっちもいねーみてえだ。」
レイとメイド服の少女の会話のわずかにできた間にレリアとウィルドが屋根上から飛び降りて、割り込んでくる。
「ありがとう、二人とも。影も倒したし、この人...えーと...」
「あっ、れ、レヴィ・アルメイエだ。助けてくれたこと、礼を言う。それで、あなた方は?」
レヴィはレイの自分への視線を感じ取り頭をぶんぶんと振って無理やり覚醒すると、レイから求められている答えにプラスαをしっかり添えて正確に返した。
「僕はレイ、それから、レリアとウィルド。」
「どうも。」
「よろしくな!」
「それじゃあ、僕たちは行くね。」
レイは自己紹介と仲間の紹介を端的に済ませると、レヴィに背を向けてその場を去ろうとする。
「ま、待ってくれ。黒のローブに、にわかには信じがたかったが精霊使いまで。聞いていた情報と一致する。もしかしてあなたたちは王の客人か?」
レイたちは動きを止め、振り返る。その目は夜の闇の中でも猛々しい赤色に輝いている。
王と面会をする予定やましてや己の格好に素性まで、そんなこと誰にも教えた覚えはない。この女は味方か、それとも...。
レイたちの脳裏に瞬間的にいくつもの疑念がよぎる。
「っ、安心しろ。あなたたちの敵ではない。んっんー。改めて自己紹介を。イヴァル王城のメイド長を務めるレヴィ・アルメイエだ。王よりあなたたちを城に案内する命を仰せつかった。」
レヴィはレイたちの殺気に一瞬ひるむもすぐに立て直し堂々とした立ち振る舞いを見せる。レイたちは突然のことにいつの間にか目の色が戻っていることすら忘れ、ぽかんと口を開けてその場に突っ立っていた。
「さあ、こちらへ。」
レヴィはしたり顔でレイたちに背を向け歩き出した。
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