第15話 不幸は続く※王子視点

「将軍が病死した!?」

「はい。今朝、報告がありました」


 部下からの報告を聞いてクライブ王子は、血の気が引いた。冷静に報告する部下に対して苛立ったが、なんとか王子は感情を抑える。


「そんなに、ヘルムート将軍の体調は悪かったのか?」

「そのようです。指揮する兵たちの前では気丈に振る舞っていたようですが、無理がたたって急に体調を崩したようです。そして、そのまま……」

「くそっ」


 死んでしまうまで無理するなんて。死人に対して言うのは酷だと理解しているが、一体誰が後始末をすることになるのか分かっているのだろうかと、文句を言ってやりたいと思ったクライブ王子。


 将軍が生きていたなら呼び出して言ってやるのに、それも出来ない。


 ヘルムート将軍の代わりを、誰に任せるのかについて頭を悩ませるクライブ王子。グレムーン王国には現在、将軍を任せられるほどの才能を持った者は居ない。人材は豊富ではなかった。


 ヘルムート将軍と比べてしまうと、誰もが指揮能力に不安があった。それでも誰かに任せないと王国兵士が動かせない。各地で反乱が頻発していて,他国の侵略の予兆に関する情報も得ている現在、早急に後任の将軍を決めないといけない。


「それから……」

「まだ、何かあるというのか?」

「はい。どうやら、反乱の支援をしている貴族が居るようです」

「なに? 反乱軍に支援だと……?」


 まだ悪いニュースがあるらしい。顔を歪めながら耳を傾けるクライブ王子は、その情報を聞いて更に渋い顔になる。


「どこのどいつが、反乱軍に支援などと……」

「まだ正確な情報を掴めていません。裏で支援しているかもしれない、という疑惑があって……」

「すぐに調査して、その裏切り者の貴族を呼び出せ! 今すぐにだ!」

「は、はい……!」


 今度は抑えきれず、怒りの感情が漏れ出てしまったクライブ王子に萎縮する部下。報告を終えた兵士は、慌てて部屋から出ていく。そして、部屋の中で1人きりになる王子。


「クソッ」


 問題が山積みだった。以前と比べて、更に状況は悪化している。良い方向へと改善するような兆しもない。


 婚約者という厄介者を遠ざけて、状況は良い方向へ向かうだろうとクライブ王子は予想していた。その予想は大きく外れることになった。希望が潰えそうになる。


 もしかして、今まで運が悪かったのは俺のせいなのか。


 そんな風に考えしてまいそうになる。いや、そんなことはないぞと何度も否定して自分の心をケアするクライブ王子。


 今はまだ、あの災厄の婚約者による不運の影響が残っているだけ。もう少し時間が経てば、王国も良い方向へ進んでくれるはず。


 そうなってくれるように、クライブ王子は必死に祈った。

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